靖国通りを歩く
早朝、6時22分。
市ヶ谷駅の1番出口から地上に出る。
大きなダンプカーが、肩身狭そうに道路の隅に身を寄せ合っている。
サラリーマンたちに次々と抜かれながら、靖国通りを歩く。
早朝ではあるものの、人の気配はチラホラ。
”靖国神社”
物陰から視線を感じる。
正体を探ろうと視線をよこに移すと
そこには小さな参拝者がいた。
「早起きな猫だ」
しばらく彼を観察した後、再び靖国通りへ出て歩みを進める。
サラリーマンとランナーが門の中へと吸い込まれていく。
北の丸公園の入り口となる”田安門”であった。
「中には何があるのだろう」
立派な門をくぐる先には、”あれ”があった。
”日本武道館”
どうやら現在工事中のようである。
囲いの中には、作業に使うあれこれが。
静かな公園ではあるが、多くの警察官がパトロールにあたる。
なぜか少し緊張する。
何も悪いことはしていないのだが。
ベンチには、”人待ち”をしている1本の缶コーヒー。
もう冷えてしまっているだろう。
それでも持ち主の帰りを待っている。
しばらく歩くと、視界が一気に開けた。
犬の散歩をしている人たちが、大勢集まっている。
犬よりも、飼い主である彼らの方が楽しそうな顔をしている。
池の周りには紅葉。
まだ綺麗とは言えないが、それでも存在感は十二分にある。
紅葉に負けじと、ススキも踊る。
”風”という強力なサポーターが彼らにはついてる。
ゆったりとした時間が流れる北の丸公園。
一歩公園の外に出ると、現実に引き戻されるような気がした。
首都高を走る車、歩道を走るランナーを横目に、私はゆっくりとまた歩く。
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