奥田知志

ホームレス支援をやっています。NPO法人抱樸:http://www.houboku.net/ 東八幡キリスト教会の牧師。 http://www.higashiyahata.info

奥田知志

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最近の記事

ボランティアとは何か―夢と使命

この間、抱樸ではボランティア講座が開催されている。今日は「伴走型支援とは何か」というテーマで講座が開かれ15名ほどが参加された。抱樸のボランティア登録者は現在2700人。 ボランティアは、ラテン語の「決意する」(VOLO)から派生した「自由意志」(VOLUMTAS)に由来する言葉だとされている。「自分自身の意志」が重要で他人に言われてやるようなことではない。 長年ボランティアとして現場に関わってきた。「すべて自分の意思で行ってきたか」と問われるとはなはだ心もとない。「やりたく

    • ダイバーシティとヨコの成長

      「ダイバーシティ」という言葉を耳にする。カタカナ言葉が増えて訳が解らない。「多様性」という意味だという。ならそう言って欲しい。「多様性」は「より良い社会」を目指す上で重要。しかし、そんな当たり前のことを声高に言わねばならないのは現実が「多様性」どころか「排除」や「差別」に満ちているからだと思う。ヘイトスピーチ、困窮者、LGBTQなどへの攻撃。世界では戦争が拡大し続けている。究極の「反多様性」、それが戦争である。 世の中は自分と同じ考え方、感じ方、生き方、環境の人ばかりではなく

      • 「自立とはともだち100人つくること―第42回自立支援住宅入居式での理事長あいさつ」

        理事長の奥田です。第42回自立支援住宅入居式を迎えました。入居をこころより歓迎申し上げます。「自立支援住宅」は2001年5月に始まりました。路上段階から伴走し、入居後自立の準備を共にします。今回入居されたAさんには3人のボランティアが半年間伴走します。  これが始まった頃、「好きで野宿をしている人を助ける必要はない」という意識が一般的でした。しかし、調査をしたところ97%の人が「野宿を止めたい」と答えました。「自立を求めている。好きでこんな生活をしているわけではない」との確信

        • 僕は当事者としてノーベル平和賞を噛みしめているか

          ノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が選ばれた。70年にわたり、あきらめることなく「核兵器も戦争もない地球」を訴え続けてられた被団協の方々に感謝すると共に、この受賞の意義を「噛みしめたい」と思う。 「噛みしめる」というのは、この地球に暮らす者として、平和を求める者としての思いだけではない。そこには「当事者性」、あるいは「主体性」と言ったことが問われていると考えている。 僕は原爆投下18年後に生まれている。被爆者ではない。家族にも被爆者はいない。しかし、

          『神は自分の側にいた』というヤバさについて

          7月13日米国トランプ前米国大統領が銃撃された。負傷しつつも無事だったことに安堵した。 キリスト教右派と呼ばれる人々はこの事件を機に支持を強めたという。「銃撃を受けながらも致命傷を免れたことについて(中略)『神から祝福された』候補との考えを強めており、選挙戦で宗教的な崇拝を奨励する動きが一段と強まっている」(ロイター)。トランプ氏自身も「神の力で回避した」とSNSに投稿。その後の共和党大会で開会の祈りをしたキリスト教福音主義者のフランクリン・グラハム牧師(ビリー・グラハム牧

          『神は自分の側にいた』というヤバさについて

          ウンチを踏んだ夜―対話ではないが対話的ではある

          「対話」はお互いが「はなしたい」と思っていないと成立しない。「相談」は「相談したい」と思っている人が相談窓口に自らやって来られるのでともかく成立する。ただ、人が「相談する気」になったり、自分が困った状態にあることに「気づいたり」するには、日常的な「他者」との関わり、つまり「対話」が必要だと思う。「いきなり相談」はあり得ない。「何気ないやりとり(対話)」が日常的にある中で「そしたら一度相談してみるか」と人は思う。だからまずは「対話」が何よりも大切だ。 ホームレス状態の方への炊

          ウンチを踏んだ夜―対話ではないが対話的ではある

           「リクライニング闘争」

           急遽、東京で午前10時に打合せが入りった。北九州発が満席で福岡午前7時発を予約。だが、その時間に自宅から福岡空港に到着できない(電車がない)ことに気づき土壇場で8時発に変更。「遅れます。すいません」と連絡し空港に向かった。希望のまちに関する大事な打合せに遅れる。焦っていた。  機内はほぼ満席状態。僕の席は普通席の最前列。搭乗した時から膝の上にパソコンを開き原稿を書き始める。滑走路が混在しているそうでなかなか飛び立たない。少々イライラ。ようやく離陸。シートベルトサインが消え少

           「リクライニング闘争」

          「入札不成立という現実-希望のまちを創る意味」

          大変ショックを受けています。戦争、紛争、物価高騰、人件費高騰(人件費が上がることは悪いことではないが)、予定外の事態が続いています。建築資材の多くを海外から輸入に頼っているこの国ですが、2020年末の円相場は、一ドル103円でした。現在は160円に迫っています。100万円で買えた輸入資材が160万円出さないと買えない事態となっています。円相場だけでも1.5倍の資材高騰となっています。 希望のまちは、建築費(設計費等含)10億円4階建てでスタートしました。しかし、2023年に

          「入札不成立という現実-希望のまちを創る意味」

          「僕が被災地に通う理由」

           先週は岩手で財団のメンバーと今後のことを話し合った。今週は能登。輪島周辺の施設や地域拠点へ物資を届け、現地の方々や輪島市役所の担当者と意見を交わした。まもなく財団の輪島事務所が開設される。  今回の地震で輪島市の海岸線は5メートルほど隆起した。あの日まで海底だった部分が海面に出ている。「白く見えるのはすべて海底でした」と説明され驚く。遠くを見ると引き上げられた船が山間に見える。正月を迎えるために引き上げられていたが海底が隆起したため船を海に戻せなくなったという。海は数百メー

          「僕が被災地に通う理由」

          牧師のことば

          僕は牧師。牧師はことばを生業(なりわい)にしている。それが「風呂屋の釜☞湯(言う)だけ」で終わったらいけない。だが、実行できずとも牧師は「ことば」を語り続ける。 30年以上聖書から語っている。でも、正直良く解らない。その時、その時、読み方が変わる。「それは奥田の恣意的解釈だ」と言われても否定できない。確かにそうだから。神様ご自身が直接語られる以外、僕のような俗物を介して聖書を読もうとすると限界がある。どれだけ分かり易く話せたとしてもそれは「答え」ではない。そう、牧師のことば

          牧師のことば

           「今も時々思う―問いの中に生きる」

           NPOの専務である森松さんの母上が急逝された。とりあえず森松さんの故郷である沖縄に向うことにした。僕の親父の時は、森松さんが滋賀まで来てくれた。日帰りで押しかけると迷惑かも知れない。でも行こうと思った。享年93歳。ずいぶん前にお会いしたきりで、最近はすっかりご無沙汰していた。長く離れて暮らしていたとは言え、実際にもう会えないとなると寂しい。「もっとこうしてやったら」、「ああしてやったら」。息子としては思いもいろいろあるだろう。心残りは縁(えにし)の証し。ともかくしょげている

           「今も時々思う―問いの中に生きる」

          大変惨(むご)いことでございました

           東八幡教会は毎春子どもたちと平和の旅に出かける。長崎、広島、そして沖縄。このサイクルで旅に出る。すでに25年ほど続いている。コロナもあり今年は5年ぶりの広島平和の旅にでかけた。    今回語り部を引き受けて下さったのは切明千枝子(きりあけちえこ)さん。15歳で被爆され94歳になられる。最初は座っておられたがすぐに立ち上がり一時間以上立ったまま子どもたちに語りかけてくださった。「本気で平和を創ってください」。最後に繰り返された言葉が心に刺さった。    これまで多くの語り部さ

          大変惨(むご)いことでございました

          「人間ってやつは―飛行機の中での出来事」

           春休みになって飛行機はほぼ満席状態が続いている。羽田から北九州に向かう機内は、日ごろはサラリーマンがほとんどだが今日は子ども連れが多い。帰省なのか、旅行なのか。あちこち小さな子どもが座っている。その日は天気が良く大きな揺れもない快適なフライトだった。  しかし、なにがどうした。ひとりの子どもが泣きだした。二歳ぐらいか。するとそれに合わせるように他の子どもが泣き始め、機内は泣き声の合唱状態。いたたまれなくなった親が子どもをかかえてあやしだす。が、子どもは一層大声で泣く。「す

          「人間ってやつは―飛行機の中での出来事」

          「平和憲法はそもそも現実的ではない」

          戦争反対、非戦、軍備も反対。そんなことを言っていると「バカかお前は。現実を見ろ。このお花畑野郎」と言われる。「ロシアとウクライナの戦争が現に起こっているのだからそんな理想論を語っても意味がない」と。 結果「現実に合わせて憲法を変える必要がある」という人が現れる。昨今、結構な人がそれを支持するようになっているようだ。だがそれは根本的に間違っている。なぜなら「そもそも憲法は現実的ではない」から。憲法は「現実を書き表した文章」ではない。 アジア全体で2000万人、日本で300万人

          「平和憲法はそもそも現実的ではない」

          「慌てるな、まだ終わりではない。なんとかなる」

           今、心細くこの時を迎えている人に伝えたい。「まだ、終わりではない」。「あわててはいけない」。僕は、僕自身にそう語りかけている。  新年早々に大きな地震が襲った。多くの家が倒壊した。家屋の下にはまだ取り残された人がいるという。ご家族はどんな思いでこの夜を迎えておられるだろう。ニュースの度に死者が増える。  羽田空港では考えられないような航空事故が起こった。民間機の乗客乗員は全員無事だったが、石川の被災地に向かう海上保安庁の飛行機は5人が亡くなった。炎の映像が目に焼き付いて

          「慌てるな、まだ終わりではない。なんとかなる」

          「避難所の誕生日ケーキ―能登半島地震の被災地で」

           元旦の午後4時過ぎ震度7の地震が能登地方を襲った。家屋の倒壊、津波ですでに200人以上の方が亡くなり、災害関連死の危険が高まっている。突然の苦難に見舞われた方々のことを思い祈る。  東日本大震災の時、私が代表をしている「ホームレス支援全国ネットワーク」、「グリーンコープ生協」、「生活クラブ生協」の三者が協働し「公益財団法人共生地域創造財団」を立ち上げた。現在も現地にスタッフを置き被災者支援と共生地域創造に向けた活動を続けている。財団の活動理念は、①最も小さくされた人に偏っ

          「避難所の誕生日ケーキ―能登半島地震の被災地で」