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【Apparel①】販売手法の変革

第1回目のアパレル業界については「販売」について書こうと思います。変革と言うと大袈裟ですが、大きく見て10年くらい前から流れが変わりました。そうです、ECの台頭です。気軽にポチっと出来て、何ならサイズやイメージが合わなかった場合は無料で返品出来る時代になりました。この手軽さが各社のEC比率を上げてる理由でもありますね。

1.カリスマ販売員はどこへ

僕が大学生の頃(25年くらい前?)ですが、Paul Smith、TAKEO KIKUCHI、INED HOMMEなどよく買ってました。(株)ワールドはご存じの方も多いと思いますが、(株)フランドルや(株)ジョイックスコーポレーションはアパレル畑じゃない方は知らないかもしれませんね。要は丸井全盛期というと分かるかもしれません。

※当時の僕はあまりセレクトで買ってなかったイメージです。BEAMSくらいかな。

顧客リストはまだ紙(というか全体的にアナログ)でしたし、何せスタイリスト(販売スタッフを僕はそう呼んでます)はとにかく顧客の顔を覚えてました。たまにしか行かなくても、「先日もいらっしゃって頂けてましたよね?」とよく声を掛けられたものです。

僕もスタイリスト経験が長く、20代のうち7~8年婦人鞄・靴を担当してました。テナント勤務でしたが、近くに大型百貨店もあったことと、ブランドも全盛期(長谷川京子さんや蛯原友里さんなど起用してました)ということもあり、売上は好調。ただ、それに奢ることなく定点観測や商品発注はかなりシビアにやっていて、トレンドをしっかり汲み取っていました。それが今の仕事の基盤となってます。

販売職に従事していたこともあって、休日は立場が逆転。接客される側になるワケですが、ポイントが分かってる接客をされるとやっぱり買っちゃうんですよね。勿論、商品知識もそうなのですが、接客上手な方は「キラーワード」を必ず持っていて落とされます。あと、主観でなくて「似合わないものは似合わない。」と失礼にならないようにハッキリ言ってくれました。なので好きなスタイリストが異動したら、その異動先に買いに行ってました。

渋谷のカリスマ店員と呼ばれていた「森本さん」は当時、メディアにはよく取り上げられてましたが、森本さん自体も裏で相当苦労されていたとのこと。今も想いがしっかりあって色々なことをされていて、頭が下がります。

兎にも角にもスタイリストが個人的には「残念だなぁ。」と思っていますが、コロナ禍の閉店ラッシュということと1990年以降に生まれた子達は「接客は要らないんだろうなぁ。」と。

大手アパレル企業のスタイリストでもそう感じるので、組織自体がそうなっているのかもしれません。

一概には言えませんけどね。

2.D to C時代突入へ

では、顧客との新密度が高いカリスマ販売員がいなくなってどうなったかというと販売者が変わったという考えのが近いかもしれません。

いわゆる「インフルエンサー」という方々が自身のSNSでフォロワーに発信して販売を促したり、またはエンドユーザーの意見を取り入れて購入者のみの分だけ受注生産し販売するなど、今の時代に合った販売手法かなと思います。

稀なケースかもしれませんが、「anuans」が分かりやすいかもしれません。売上達成に向けての方程式が出来上がってます。

店舗では1日に9,200万円なんて不可能に近く、かつ人件費、広告宣伝費、賃借料、備品費、その他諸々掛かると、「Web上が如何に効率が良いか。」になると思います。登録作業が大変ですが、それって店舗でいう開店作業と一緒ですから。

そうなるとどういう事が起きるかって言うと、エンドユーザー自体の目利き(質の良さや自分の好みなど)が出来なくなり、メーカー側は売れる(売れそうな)モノしか作らなくなる。「お店で一目惚れして買うことが楽しかったのに残念だなぁ。」と思います。もはや考え方が古いかもしれませんが、でも結局はface to faceな気もしているワケで。

ちなみにD to Cを否定しているわけではありません。

3.バイイングをしているからこそ、エンドユーザーに分かってほしいこと

コロナ禍で最近は海外出張に行けてませんが、年に4,5回はヨーロッパを中心に行ってました。本国との交渉はそれこそ大変で、「あーじゃないこーじゃない、日本人はこうなんだよ。」とか毎回繰り広げられます。

でもそのやり取りの結果、日本マーケットで認知を獲得したり、同業他社よりも売上が出来るとバイイングしている方も嬉しいし、その苦労をスタイリストに伝えることで今度はそれをエンドユーザーに理解してもらえるのが嬉しいです。

昔はPOP UPでの応援販売にも行き、「こちらの商品は日本で3点しか仕入れてません。」という卑怯なキラーワード(全員には使いません)を使い、「それ、ずるいよー。買うしかないじゃん(笑)」というやり取りもありましたが、バイイングした経緯や「何故、貴方に持ってもらいたいか。」も説明してました。こういうエンドユーザーとの掛け合いが接客の醍醐味かなと思ってます。

なのでスタイリストの方は「何故この商品が陳列されているのかな?もっと知りたい!」を考えてもらえると、バイヤーやデザイナー・パターンナーの気持ちに近づけるのではないのでしょうか?


4.最後に

僕はやっぱり接客が好きなので、スタイリストの方はこんな世の中ですが販売職に誇りを持って欲しいです。

「どうせECで買うから…。」という気持ちも分かりますが、もし店頭で接客を受けてECで買って貰えるなら少なからず影響を与えたということです。それは売上には表れませんが、自身の蓄積になりますから。そして、企業側も売上が大事なのは十分に理解していますが、彼/彼女たちのKPIとして評価してあげてほしいと思います。


次週は「僕が感じた日本と海外の百貨店の違い」をお伝えしたいと思います。興味があれば是非読んで頂けると嬉しいです。

※写真は2019年6月のPitti Uomo。
いつもワクワクしながら行ってました!

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