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B'zと教会旋法 #003-1 「鞭」2025年 ①イントロのギターフレーズ
いやね、今回の枕では「カルい文体をめざしててぇ……それで最近『スレイヤーズ』を読み返しててぇ……地霊咆雷陣ゥ……」みたいな話をする予定だったんですよ。
短編の方ね。ナーガにセクシーを感じなかった俺というか時代がヤバいよね。
でも、そんなお屠蘇気分はすっかり吹き飛びました。
どう考えても旋法で理解できない冒頭4小節と、これまた旋法が効かない歌メロ本体……B'zは士師記のバラバラ死体並の問題作を放り込んできましたよ。
ということで、今回は最新曲「鞭」です。
……が、いい加減仕事に集中しないとヤバいのも事実ですので、今回はイントロのギターフレーズのみ、取り急ぎ。
はじめに ―分析の流れ―
このシリーズでは、B'zの楽曲の歌メロを、以下の手順に従って旋法的に分析していきます(今回はギターですが)。
とりあえず長調か短調と仮定して、Aメロをソルフェージュ(階名唱)してみる。
以下の条件に合うように移高する。
階名で言う「シ」に、♭が付いたり付かなかったりする。
導音(仮定した調での終止音のひとつ下)に、♯が付いたり付かなかったりする。
Bメロ、サビなどで同様の作業を繰り返す。
あくまで歌メロのみを分析する。リフ、ギターソロ等は考慮しない。基本的には、サビの終止音を楽曲の終止音とし、終止音で楽曲を以下の教会旋法に分類する。
とは言え、楽曲全体がひとつの旋法とは言えないパターンなど、例外があるため、その場合は「まとめ」で指摘する。
終止音 →旋法
レ → ドリアン (ドリア旋法)
ミ → フリジアン (フリギア旋法)
ファ → リディアン (リディア旋法)
ソ → ミクソリディアン (ミクソリディア旋法)
ラ → エオリアン (≒短調、エオリア旋法)
ド → イオニアン (≒長調、イオニア旋法)
旋法のルール(独自研究)
私が勝手に決めたこの旋法のルール、あくまで「B'zなどの歌もの楽曲を、(私のような)音楽の素人でも、気軽に分析できるように」組み立てました。
(いちおう16世紀の「多声部」教会旋法をベースにしています。)
全音階の中で、半音で揺らぐ音は多くてもシと導音の二つのみ、その範囲内に収まるならば教会旋法、と規定したわけです。
そして、B'zの楽曲の多くは、転調/転旋を伴っていても旋法の枠内に収まっているものが多く、最近の曲は転調もあまりしていないように感じます。
それで私も、下記のようなナメたポストを打っていたわけです。
「一瞬だけファに#がつく長調」で、ジュネーブ詩編歌にもそういうイオニア旋法の曲あるけど、私の中ではそれはリディア旋法なんで……(独自基準)。
— 明日の僕は今日よりもBAG (@tomorrowsbag) October 26, 2024
それにしても、最近のB'zは「各部分の中にムリヤリねじ込む転調が少なくなった気がする。
そうしたところに、転調らしきものはないものの、半音で揺らぐバクダンを複数抱えた「鞭」が放り込まれたわけですから、それはもう、ムチムチのムチな妻を見たときのように狂喜乱舞しておりますよ。
……妻の体型と私の性癖にまで、話が脱線してしまいました。急いで軌道修正します。
歌メロ……ではなく、ギターフレーズ分析
イントロ4小節
今回の分析は、冒頭4小節のギターのフレーズだけです。
普段はギターソロなんてまったく気にも留めないんですが、今回は音階的にはっきりくっきり分かりやすいものをお出しされましたので、分析してみます。
……いや、音階自体は、何が何だかわからないんですが。
4小節目が強烈にドで終止していますので、長調と仮定して、イントロをソルフェージュしていきます。
レーミレー ミーファシー
レーミファラ♭ファミレドー
(長調と仮定)
何だよこれ……。
ラ♭って、何だよお前……。
いやまあ、イスラム圏では普通の音階かもしれませんが、あいにく私はプロテスタントのキリスト教徒なので……
あ、いや、別にケンカを売りたいわけではありません。単純にイスラム圏の文化の知識がないだけです。
カトリックの領分の教会旋法も、そんなに詳しくはありませんし。
とにかく、以下の理由で、このフレーズは教会旋法の枠内には収まりません。
シは導音で、本来はシ♭と仮定しても、ラ♭、シ♭、ド、レ、ミの5音が全音で連続するという、全音階ではありえない並びになる。
となるとイオニアン(長調)かリディアンだが、いずれにせよラ♭は説明できない。
こうなると、この曲を教会旋法で説明しようとすること自体が間違いなんでしょうね。
この後の歌メロ本体の方も、旋法にはならなそうなので、何か別のアプローチを考えた方がいいようです。
誰か和声で説明してください。
まとめ
B'z「鞭」2025年
旋法は、冒頭4小節で……何この…何?
何も解決していませんが、とりあえずこの衝撃を、配信日のうちに伝えたかったので、恥を忍んで無茶苦茶しつつ書きました。
ムチムチな妻にムチュウです、はい。
あとがき
日付が変わる前に書き上げようと焦っているのに、クッソくだらねぇ小ネタに足を取られてすっ転んでいる様子が、皆さんにも伝わっているのではないでしょうか。
恐らくは、音楽のプロの皆さんが、きちんと時間をかけて素晴らしい分析記事を書いてくださると思いますので、気長に待ちましょう。
参考文献
旋法についての理論は、おおむね以下の参考文献に負っています。
金澤 正剛『新版 古楽のすすめ』音楽之友社、2010年
金澤 正剛『中世音楽の精神史 グレゴリオ聖歌からルネサンス音楽へ』河出文庫、2015年
佐藤 良明『J-POP進化論 「ヨサホイ節」から「Automatic」へ』平凡社新書、1999年
(増補改訂版も持っています! (読んだとは言ってない。))東川 清一『旋法論 楽理の探究』春秋社、2010年
西田 紘子、安川 智子 編『ハーモニー探究の歴史 思想としての和声理論』音楽之友社、2019年
皆川 達夫『中世・ルネサンスの音楽』講談社学術文庫、2009年
Owens, Michael E., "An introduction to the Genevan Psalter," published on the Internet, 2009.
https://genevanpsalter.com/articles/owens-intro/
続きは気が向いたら書きます。……もしかしたら、楽な「マイニューラブ」あたりを取り上げて、「鞭」は封印するかもしれません。
それなりに待て!