2024年・飼育繁殖総括
今年は実に忙しく充実した一年だったが、飼育繁殖の知見開拓において思い出せる限りでは「ほとんど上手くいかなかった」と言っていいような気がする。
仮説の否定という知見自体は得られるため無駄な一年ではなかったが、生物趣味を本格再開してからの7年間でここまでのハズレ年は珍しい。
オオヒラタトックリゴミムシ
出張先で偶然出会った絶滅危惧IA類、オオヒラタトックリゴミムシの繁殖は産卵と孵化に成功したものの、その後は仮説が外れ失敗。
幼虫の飼育では過去にオオトックリゴミムシの繁殖で得た知見を試すも、オオヒラタには全くと言っていいほど通用せず、ほとんど餌を食べる事なく全個体が1齢で死亡した。
しかし両種とも同属かつ現地の生息環境が非常に近く、完全に異なる生態であるとは考え難い。
今回の失敗は飼育環境によるものが大きいのかもしれない。
この件は、今まで手癖で行ってきたゴミムシ幼虫飼育の手法を再考するきっかけとなった。
アオヘリアオゴミムシ
(10年以内にランク変更となるかもしれないが)同じく絶滅危惧IA類アオヘリアオゴミムシの繁殖は、今までの成功例と全く異なる新たな仮説を複数用意するも失敗。
さらに代用餌の確保が上手くいかず、前年度の成功例ベースの実験を改めて試せなかったというのも痛い。
本種の繁殖論文を発表した、国内最高峰クラスの飼育技術を持つ石川県ふれあい昆虫館の研究チームの腕を以てしても「非常に難しい」と言わしめたその壁を改めて痛感する。
この件もゴミムシ幼虫飼育の手法を再考するきっかけとなった。
セアカヒラタゴミムシ
初挑戦となる幼虫越冬型ゴミムシ・セアカヒラタゴミムシは現在も順調に育ってはいるが、これは新規開拓というよりも「初歩のおさらい」に近い難易度に感じる。
今期は上手くいけば幻のゴミムシの繁殖に挑戦したかったが、残念ながら今の自分の実力では出会う事ができなかった。
その虫もセアカヒラタと同様に幼虫越冬型であるため、初歩的なゴミムシ飼育の再勉強と幼虫越冬型の初体験をさせてもらうために本種の飼育に挑戦したという経緯がある。
幼虫越冬型ゴミムシは低気温・低代謝に適応しているためか、こちらが1週間以上家に帰れず餌を与えられない状況でも餓死をする幼虫が全く見られない。
これは夏季に繁殖し活発に活動する高代謝なゴミムシ幼虫とは全く異なる傾向なので、自分の生活スタイルに合う新たな昆虫の可能性を発見できた事に喜びを見出せた。
ビオトープのギンヤンマ
「庭のビオトープでギンヤンマを繁殖させる」という幼少からの夢は、眼前で産卵が行われるという最高の形で成就した。
ただしこれは心の底から喜んだイベントではあるものの、環境を用意した上で行われた半自然繁殖であるため、厳密には「飼育繁殖」という括りから少し外れてしまうだろう。
希少種A
はるか昔に繁殖を行った希少種Aの代用餌を考案し、市販の餌のみを使用した累代飼育&大量繁殖を夢見るも、今年は野外でその希少種に出会う事すらできずにシーズンが過ぎた。
実に2ヶ月以上、ほぼ毎日続いた捜索も全く実を結ばず、スタートラインに立つ事もできず、20代最後の夏が終わってしまった。
しかしその道中で学べた事はあまりにも多い。
本命こそは叶わなかったが、自由を謳歌できる最後の夏を浪費しているという覚悟の下で各地に赴く経験は、自分の観察・捜索スキルを大幅に向上させてくれた。
今思い返してみると、毎日が背水の陣であった気さえしてくる。
来年はもっと上手く自分を追い込み、もっと少ない時間で、効率的に決着を付けられるように精進したい。
今年の飼育繁殖に関する感想はこんな所だろうか。
基本的に「もしかすると何らかの紙面で報告すべき内容かもしれない」と感じた物はほとんどインターネットに上げずにメモや写真として溜め込み続けているので、そうした物も今後は発表できるように進めていきたい。
今現在250個を越える下書き等も…それぞれ消化していきたい。