野外にて越冬準備を行うオサムシの観察記録2例
2020/11/01
この日は前回の記事で言及したように、飼育するオサムシやゴミムシ類の越冬の準備を行った。
そしてその夜、用事があって遠出した際の帰路でとある林道へと立ち寄った。
この場所では準絶滅危惧種のカネコトタテグモを多数見る事ができるため、その種を発見して以降は毎年立ち寄る事にしている。
ポイントへ向かう道中で何らかの徘徊性昆虫に出会う事を期待して歩くと、斜面にてLEDライトの光を小さく反射する物が見えた。
初めは散乱するガラス片か何かが照らされただけかと思ったが、どうやら穴の中に金属光沢を持つ物が存在するようだ。
近付いてよく見ると、穴の周りは不自然に土が隆起したり散らかったりしている。
穴を起点にした放射状である土の広がり方から察するに、中で掘削が行われているかのようにも見受けられる。
これはもしや…徘徊性甲虫の類が越冬準備をしているのか?と考えた。
中に覗くのは暗い緑色の金属光沢。
そして落ち葉が豊富な林道の斜面。
大体の見当が付き、試しに掘り起こして確認する事にした。
恐らくこの穴の中にいるのは…
その正体は予想通りアオオサムシだった。
ここは森林のオサムシが越冬地として選ぶような場所。木の根が随所に張るような、典型的なオサ掘りポイントとされるような環境だ。
その当時は冷え込みも進んだ時期であったため、そろそろオサムシ達も越冬させるべきだろうと考えて飼育下での越冬準備を行なったが、どうやら野外においても全く同じタイミングでアオオサムシが越冬準備を行なっていたようだ。
掘り出してしまったアオオサムシには悪いが、オサムシの越冬準備という貴重なシーンの一部を目撃する事ができた。
観察した個体はそのまま逃したが、無事に再度越冬準備を終えて春を迎えてくれた事を祈る。
また、顕著な暖冬とされた前年2019年11月上旬はまだ活発に活動を行う個体が多く、同所にていくつかの轢死体やピットフォールトラップに入った複数匹が確認された。
そして2019/11/19、その年においても越冬準備を行うアオオサムシと見られる個体が観察できた。2020年に比べて少し遅い時期だ。
こちらは今まさに土中へ潜ろうとしている最中であると考えられる。
こちらもまた貴重な観察例だろう。
林道の崖でオサ掘りによって見出された越冬中のオサムシ類の観察例は数あれど、不思議な事に越冬準備に関する物、特に画像などは比較的少ない。
ピットフォールやルッキング採集がメインで行われる時期とオサ掘りがメインとなる時期の境目、虫の数が減り始めるそんな時期に夜間の観察を行う者自体があまり多くないからなのかもしれない。
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