![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/148835755/rectangle_large_type_2_2eecf502c4c5efaa4959025bf1197fd7.png?width=1200)
Photo by
bright_puma5324
すべて美しく成り立つ
夜中の大浴場の湯舟に
天井から一滴、
水滴が、
落ちるときに
残る
余韻が
いつまでも
耳に残るとき。
夜の深い時間に
眠れずに
悩む
少年が
明るく光る
スマホのブルーライトの中に
永遠の夜の
透明な海を見るとき。
何気ない
平凡な朝に
太陽の柔らかな光の入る
平和なキッチンで
コーヒーペーパーから
黒い滴が
ポタポタ落ち
色鮮やかなマグカップに
コーヒーが
たまるとき。
燃えるような昼間に
白い
砂漠が干上がり
全部、
上昇し、
いよいよトカゲの世紀だと
学者が笑い
濃い青空に吸い込まれるとき。
木製テーブルにある
少年が書きかけた
ソネットの
紙のうえを
シェイクスピアが嫉妬しながら
通り過ぎ、
未完成なまま
風がすり抜け
日々が過ぎ去り
やがて大人になるとき。
誰も知らない
目立たない少年が、
心に怪物を飼いながら
決して公開されることがない
ストーリーを紡ぎ、
あっという間に
永遠ができあがるとき。
3時の時間に
僕の彼女は昨日よりもよく笑い、
美しく
優しい。
彼女は外から聴こえる木琴の調べを聴きながら
あなたのことが好きよと言ってくれたあと
透明になって
消えた。
やがて
すべて思い出すように
忘れていく
淡い
僕の思い出。
すべて美しく成り立つ。
まるで呪文みたいに、
唱えてみる。
世界は当たり前に
矛盾なく
平仄を保ち
動いている。
すべてから愛を感じよ。
全身で
全力で
きわめて
個人的に。
愛を
感じよ。