【100均ガジェット分解】(47)ダイソーの「新シャッターリモコン」
※本記事は月刊I/O 2023年2月号に掲載された記事をベースに、内容を追記・修正をして再構成したものです。
ダイソーのBluetooth対応の「シャッターリモコン」の新パッケージが200円(税別)で登場しました。今回はこれを分解してみます。
パッケージと製品の外観
これまで販売されていた「シャッターリモコン」(本誌2018年9月号で分解)は300円(税別)でしたが新パッケージで200円(税別)に値下げされました。
パッケージの内容物は本体と取扱説明書です。本体の外観はこれまでのものと同じですが、各ボタン部に印刷されていた「iOS」と「android」の表示がなくなり、2個のボタンが同一機能となりました。
本体にはあらかじめテスト用の電池(CR2032)が装着されています。裏面には「技適マーク」が印刷されており、取扱説明書も「日本語」です。
製品仕様に記載のBluetoothバージョンはVer.5.2、通信距離は約10m、電池寿命は約6ヶ月です。
本製品のお問い合わせ先(輸入元)は最近のダイソー商品でよく見かける、大阪に本社がある「MAKER株式会社」です。
本体の分解
本体の開封
裏面の電池カバーを固定しているビスを外して電池を取り出します。本体のケースは樹脂のはめ込み式ですので、側面の隙間にカッターの刃のような薄いものを差し込んでこじると開封できます。
内部にあるのはメインボード1枚だけです。
回路構成
メインボード
メインボードはカラスエポキシ(FR-4)の両面基板です。基板表面にはコントローラICと24MHzの水晶振動子、電源スイッチ、リモコンボタン用スイッチ2個、Link状態表示用のLEDが実装されています。
Bluetooth用のアンテナは基板上にプリントパターンで構成されたは板状逆 F 型アンテナ(PIFA)です。
裏面にはコイン電池用の電極がハンダ付けされています。
プリント基板の型番と製造日(XFY-YC1308-20211126)はシルクで印刷されています。
回路図
基板パターンから回路図を作成しました。「NMT」はパターンはあるが部品が実装されていないことを意味しています。
コントローラIC(U1)はBluetooth内蔵のSoC、動作に必要な周辺部品は水晶振動子のみです。2個のボタン用スイッチはそれぞれコントローラICの別のピンに接続されています。
基板上には製造時の動作チェック用のテストランド(GPIO7, GPIO8, ICE)があります。
主要部品の仕様
コントローラIC(U1) 「YC1386-F」
コントローラICは易兆微电子(杭州)股份有限公司(Yichip Microelectronics, http://www.yichip.com/)のローパワーBluetooth SoC「YC1386-F」です。
YC13xxシリーズの製品仕様は以下より入手できます。
「YX1386」は量産製品のリストにはありません、ラインアップに同じパッケージ(SOP8)のものがありますので、特定用途にあわせたカスタム品だと推定できます。
動作電圧は1.7〜5.5V、サポートするBluetoothのバージョンはVer.5.2です。
プロセッサは24MHz 32bitの独自MCU(カスタマイズされたRISCプロセッサ)、AES128ハードウエア暗号化に対応しています。
ICE端子(7ピン)はシリアルワイヤでのデバッグポート兼用となっています。
水晶振動子(Y1) 「24MHz(汎用品)」
水晶振動子は2端子タイプの24MHzの表面実装品です。これは汎用品でパッケージにも周波数の表示しかなく、メーカーの特定はできませんでした。
実装されている水晶振動子を外して確認したところ、プリント基板のパターンは小型4端子タイプの水晶振動子と兼用できるようになっていて、調達コストに応じて安いものも使えるように配慮されています。
動作確認
スマートフォンでの確認
スマートフォン(今回はOPPO Reno 3Aを使用)からは「BT Shutter」という名前で検出されますので、ペアリングを行い接続します。
「Bluetoothスキャナー(https://play.google.com/store/apps/details?id=com.pzolee.bluetoothscanner)」というアプリで確認すると、Bluetooth Low Energy (BLE)接続のキーボードとして認識されています。
接続された状態でボタンを押すと画面左の音量バーが上がります。
カメラアプリは音量ボタンでシャッターが動作しますので、これで写真が撮影できます。
「nRF Connect(https://play.google.com/store/apps/details?id=no.nordicsemi.android.mcp)」というアプリでBluetoothのサービスを確認すると、”Battery Service”と”Human Interface Device”(以下HID)を使用していますので、キーボードとして接続されているという結果と一致します。
参考までに、nRF Connectで2個のボタンそれぞれを押したときのログを取得して比較したのですが、差はありませんでした。
PCと接続してみる
本機はHID(キーボード)ですので、Windows10及びWindows11を搭載したPCに接続を試みましたが、どちらもドライバの読み込みでエラーが発生しうまく接続できませんでした。
ちなみにM1 Macには問題なく接続でき、音量コントロールも正常に動作しました。
まとめ
既存製品からのコストダウン版ということで、コントローラICが小さくなっていました。(SOP16 → SOP8)
ただ、既存製品の外装を共用し、ボタンも2個ついているにもかわらず、どちらを押しても全く同じ動作になっていたり、Windowsとの接続でエラーが発生していたりと、機能的には少し残念な結果でした。
「スマートフォンのリモートシャッター」という本来の機能には問題はないのですが、それぞれのボタンはコントローラICの別々のピンに接続されていますので、片方を従来のandroidボタン(音量アップ+改行)と同様もしくは別の機能に割り当ても良かったのではという感想です。
本製品のお問い合わせ先(輸入元)である大阪の「MAKER株式会社」、現時点(2023年7月)でもホームページも存在せず詳細不明です。
取扱製品をみると「目の付け所がよいな」と感じることが多いので、もしご存じの方がいらしたら情報をいただけると嬉しいです。