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【100均ガジェット分解】(42)ダイソーの「タッチ対応完全ワイヤレスイヤホン」(TWS四代目)
※本記事は月刊I/O 2022年9月号に掲載された記事をベースに、書ききれなかった内容を追記・修正をしたものです。
ダイソーの「完全ワイヤレスイヤホン」は2023年1月時点で4種類が販売されています。今回は"四代目"である「タッチ対応完全ワイヤレスイヤホン」を分解してみます。
パッケージと製品の外観
製品パッケージと取説
ダイソーの「完全ワイヤレスイヤホン」の四代目は価格1000円(税別)のままタッチ操作に対応しました。ブランドはダイソー、イヤホンシリーズの「No.8988」となります。
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通信方式は「Bluetooth V5.0」。バッテリー容量はイヤホンは未記載、充電ケースは「300mAh」、音楽の連続再生時間はイヤホン単体で3時間、充電ケース併用で9時間です。
第41回で分解したラティーノ製「E-TWS-2」より電池容量は多いのですが、連続再生時間は短くなっています。
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操作はイヤホン側面にタッチして行います。タッチするパターンの組み合わせで複数の機能を操作することができます。
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音質は初代の「TWS001」(2021年8月号で分解)と近く低音が強め、個人的には付属のイヤーピース(Mサイズ)でも屋外での散歩等の日常使いであれば十分使えるレベルであるという感想です。
同梱物と本体の外観
パッケージの内容は「イヤホン(左右各1個)」「充電ケース」「取扱い説明書(日本語)」です。充電ケースのコネクタは「USB Type-C」、充電ケーブルは付属していません。
イヤホンの外装はプラスチック製、付属のイヤーピースは1種類のみです。
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充電ケースとイヤホンのコンタクトはTWSでは一般的な磁石でイヤホンと電極が接触させる構造です。
「技適マーク」と「PSEマーク」は充電ケース裏面にあります。
充電ケース表示の型番は「TWS_G273」、PSEの取得は「株式会社 TFN(https://tfnmobile.com/)となっています。
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イヤホンの開封
イヤホンのケースはツメで固定ですので、隙間に精密ドライバ等を差し込んで開封できます。
内部はメインボード・LiPoバッテリー・スピーカー・充電電極が入っています。LiPoバッテリーはメインボードに直接両面テープで固定されています。
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イヤホンの回路構成
LiPoバッテリー
LiPoバッテリーは401012サイズ(幅12 x 高10 x 厚4.0mm)で容量35mAh、保護回路は内蔵しておらず、タブ(電極)にリード線を直接ハンダ付けして折り曲げ、ポリイミドフィルムテープで固定しています。
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メインボード
メインボードはガラスエポキシ(FR-4)の4層基板、基板の型番「63A-ACX-09J-V2.0」と製造日(20210527)がシルクで印刷されています。
表面にはメインプロセッサ・水晶発振子、裏面にはタッチコントローラ・タッチ電極・コンデンサマイク・積層チップアンテナ・保護ダイオード・LED(R/B)が実装されています。基板上にはプログラム書込み用のテストランド(DP/DM)もあります。
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回路構成
基板パターンからメインボードの回路図を作成しました。回路番号は基板に表示がないので、筆者が割り当てました。
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主な半導体はメインプロセッサ(U1)とタッチコントーラ(U2)です。
メインプロセッサの周辺部品はコンデンサと水晶発振子(24MHz)のみで、必要な電源は全てプロセッサ内蔵のPMU(Power Management Unit)で生成しています。
メインプロセッサには充電電源(5V)とLiPoバッテリー(B+/B-)が直接接続されており、内蔵のPMUでバッテリーの充放電制御も行っています。
タッチコントローラは個別のICを使用していて、出力がメインプロセッサのI/Oポートに接続されています。
D3は2個入りの特殊なダイオードでLiPoバッテリーの保護用だと思われます。
イヤホンの主要部品
メインプロセッサ AC6963A
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メインプロセッサは珠海市杰理科技股份有限公司(ZhuHai JieLi Technology Co.,Ltd., http://www.zh-jieli.com/)のDSP内蔵のBluetooth TWS用SoC「AC6963A」です。
BT用のLDOを内蔵することで、消費電力が若干増えても周辺部品を減らす設計になっています。
データシートは以下より入手できます。
https://www.kepuhaodianzikeji.com/newsinfo/644114.html
タッチコントローラ 33D8
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タッチコントローラはマーキングでメーカーを調べたのですがわかりませんでした。ピン配置と機能は台湾の通泰积体电路股份有限公司(Tontek Degign Technology Ltd.)製の「TTP223」と互換になっています。
「TTP223」のデータシートは以下より入手できます。
https://datasheet.lcsc.com/szlcsc/TTP223-BA6_C80757.pdf
「TTP223」のピン互換ICは中国の色々な会社が作っていて、タッチコントロール対応のガジェットではよく見かけます。
充電ケースの開封
充電ケースもツメで固定されているので、隙間に精密ドライバ等を差し込んで開封できます。内部は充電ボードとLiPoバッテリーが入っています。充電ボードには充電状態を表示するLEDの導光用成型品がついています。
LiPoバッテリーは充電ボードに直接ハンダ付けされ両面テープでケースに固定されています。
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充電ケースの回路構成
LiPoバッテリー
LiPoバッテリーは保護回路内蔵の602030サイズ(幅30 x 高20 x 厚6.0mm)で容量は300mAhです。
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充電ボード
充電ボードはガラスエポキシ(FR-4)の両面基板、基板の型番「XH-09J-CHG-GR3014A-V1.2」がシルクで印刷されています。表面には充電制御IC・インダクタ・イヤホン充電用コンタクトピン(ポゴピン)・USB Type-Cコネクタ・LED 4個が実装されています。
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回路構成
基板パターンから充電ケースの回路図を作成しました。
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USB Type-Cは充電専用で電源(VBUS)・GNDのみの接続、USB-PDで必要なCCラインのプルダウン抵抗はついていません。
USB-PD対応の充電器で両端がType-Cのケーブルを使用した場合は充電できない可能性があるので注意が必要です。
充電制御IC(U1)はUSB電源(VBUS=5V)からのLiPoバッテリーへの充電と、LiPoバッテリーの電圧を5Vに昇圧し、+/-端子を経由したイヤホンへの充電(充電ケースから見たら放電)を行います。ケースの充電状況に応じた4個のLEDを制御する機能もあります。
充電ケースの主要部品
充電制御IC GR3014A
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充電制御ICは深圳谷雨半导体有限公司(Grain semiconductor, http://www.grainsem.com/)の「GR3014A」です。
データシートは以下より入手することができます。
http://www.grainsem.com/Upload/3e3049b2-1d92-4fcb-80ee-da3829655246.pdf
Bluetooth接続情報の確認
今回も「Bluetooth Scanner」で接続情報を確認しました。
名前は「DAISO_TWS_G273_1」、プロファイルは「ヘッドセット」、サポートするコーデックは一般的な「SBC(SubBand Codec)」、プロトコルは「Classic(BR/EDR)」で接続されています。
ベンダーはこれまでのものと同様で「不明」と表示されました。
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まとめ
前回(2022年8月号)で分解した「E-TWS-2」と比較すると、プリント基板のパターン設計はきちんとしている印象でした。それだけに充電ケースのCCラインのプルダウン抵抗追加と、イヤホンの「LiPoバッテリー」を保護回路内蔵にしていないのはもったいないです。
書籍発売のお知らせ
本記事の内容も収録された単行本が2023年1月27日に工学社から発売されました。
連載時の内容に分解の経過や載せられなかった部品情報等を追加していますので、こちらもぜひお手に取ってみてください。
(以下の写真から工学社の書籍情報にリンクしています)
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