創作言葉遊び「遺伝字」
今回紹介する言葉遊びのタイトルは、「遺伝子」ではありません。「遺伝”字”」です。
元々僕は生物学系の学科を卒業しており、遺伝学の講義も履修しました。もっとも当時の生物学界隈の話題と言えば、まだiPS細胞が仮説の段階だったりと、現代の知識から見たらだいぶ遅れていたのでしょう。それでも、まるで精密機械のような遺伝子のメカニズムの話に、驚きと興奮を感じていました。
余談ですが、僕が言葉遊びが得意なのは、理系の頭で言葉を見ているからだとも思います。
さて、遺伝子はどこにあるのでしょう?といえば答えはずばり、DNAです。DNA配列、という言い方があるように、DNAの構成は4種の塩基の対が連なることでできています。ヒトの持つDNAの場合、この連なりは約30億と言われています。その膨大な塩基対は二重らせん構造をつくり、僕たちの細胞ひとつひとつに入っているのです。
4種の塩基というのは、アデニン(Adenine)、チミン(Thymine)、シトシン(Cytosine)、グアニン(Guanine)。頭文字を取って、A、T、C、Gで表記したりします。
このATCGの組み合わせが、その生物に必要なあらゆる器官や細胞をつくるための、言わば設計図となっているわけです。
そう、「A」「T」「C」「G」の組み合わさり方で何でも作れる。
ということは、「A」「T」「C」「G」の4文字を使えば、どんな漢字でも書けるのではないか?というのが今回の言葉遊びの着想です。
「遺伝字」ルール:遺伝子を構成する塩基、「A」「T」「C」「G」の組み合わせにより、様々な文字を作る。
ルールだけ読んでもわかりづらいというものでしょう。まずは一つ、見ていただきましょう。
遺伝子の生む「笑い」。
はい。「笑」という文字ですね。
この「笑」の文字、よく見れば「A」「T」「C」「G」の組み合わせで書かれています。見えますでしょうか?文字によっては回転しているので、色々な角度で見てもいいでしょう。それでもわかりにくいという方のために、色分けしたものがこちら。
赤が「A」、緑が「T」、青が「C」、橙が「G」、となっているのがわかると思います。このように、遺伝子で書いた様々な漢字を紹介していきます。
続いてはこちら。
遺伝子の生む「夢」。
どこが何のアルファベットになっているか探してみるのも良いでしょう。どんどん行きます。
遺伝子の生む「一日」。
このようなシリーズものもいくつか作りました。続けて参ります。
遺伝子の生む「季節」。
遺伝子の生む「風景」。
遺伝子の生む「感情」。
遺伝子の生む「物語」。
いくつか作っていくと、シンプルな文字の場合アルファベットが余ってしまうことがあります。そこで、熟語全体で「A」「T」「C」「G」の4字としたものも作りました。
遺伝子の生む「文化」。
遺伝子の生む「生命」。
遺伝子が生命を生む、という言い回しは良く考えたら当たり前ですが、ここまで見てきたのならその当たり前も奇跡のようなものだと感じてもらえるでしょう。
それでは続いて、大きなものを表現して章を終えます。
遺伝子の生む「星」。
これにて、遺伝子も文字も、似たようなものであることを示すことができました。
そもそも、遺伝子も文字も、伝達手段である、ということは共通であり、壮大な人類の歴史の中で伝え続けられてきました。
遺伝子を伝えるために必要なものは何でしょう。その機序について言えば色々な言い方もあるでしょうが、特に大切なもの。それは、「愛」に他ならないでしょう。愛があったから、人類は発展し、また愛をつなぎ、僕たちが生まれたのです。
文字を伝えるのも愛です。ラブレターはもちろんですし、一見無愛想な教科書や役所の書類の文字だって、大切な情報を正しく伝える、という愛です。名著をたくさんの人が読めるように印刷するのも愛だし、その代表が聖書です。
文字が発明された時にだって、愛が存在したに違いありません。考古学的な事実だけでは愛があったかどうかまではわからないですが、僕の好きなストーリーに、藤子・F・不二雄氏の漫画「T・Pぼん」の中のエピソード、「シュメールの少年」があります。
紀元前3319年、それぞれ離れた村に住む少年と少女。二人は離れていても互いに話をするため、少年の決めた「しるし(象形文字のようなもの)」を粘土板に書き、それをペットのオオカミの首に巻いて届け合うのでした。ある日、オオカミがなかなか帰って来ず・・・
と、物語は続きますが、この「文字の生み出しの理由」が、なんとも素直な愛じゃないですか。「君と話がしたいから」、ですよ。逆に遺伝子にも当てはめて考えてみましょうか。君と話がしたいから、人類は誕生し生きている。生きる理由って、案外それだけあれば十分かもしれません。
愛のあるものは増大します。
遺伝子は細胞分裂時に複製され、また生殖細胞も作り出し、やがて掛け合わさり多様性を作ります。近年では技術も発展し、そういえば、iPS細胞にも「アイ」が入っています。
文字もそうです。大切な言葉は文字として広められ、活版印刷の発明やIT(アイT)の進化の中で爆発的に広がりました。
そうすると、僕が今ここで言葉遊びをしているのもあなたがこれを読んでいるのも、これまでの愛の重なりの結果なのです。
というわけで、こちらをどうぞ。
遺伝子の生む「愛」。
愛は遺伝子を拡大させましたが、逆に遺伝子を奪い去るものがあります。
戦争です。
多くの命さえ奪ってしまう戦争。遺伝子が途絶えてしまう、こんな悲しいことはないです。
戦争を止めるのも、やはり愛でしょう。そして「ペンは剣よりも強し」、現代ならペンはペンでもスタイラスペンでも良い。SNSに文字を書けば、たった一人の声も世界中に届くのです。
戦争に、愛をぶつけてやりましょう。
戦争は英語で「war」です。そこに「ai」をぶつける。
そうすれば、
warai 。
笑いに変わります。
「愛」の遺伝字から、冒頭の、「笑」の遺伝字に戻ってきました。
この素晴らしい二人は結婚し、新たな遺伝字を誕生させてくれました。
「愛」と「笑」の二重らせんから生まれた言葉。愛と笑いにあふれた、君と話がしたいがためにそこにあるような、そんな平和の象徴みたいな言葉が生まれることでしょう。
子どもには名前を付けましょう。両親から一文字ずついただくのはどうでしょうか。「愛」からは「い」、「笑」からは、笑顔、なんて言葉もありますから、「え」。
「愛」から「C」と「G」、「笑」から「A」と「T」を受け継ぎ、生まれました。
遺伝子と遺伝子の生む「家」。
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