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人生を変えた名盤シリーズvol.16 『ノーホエア(Nowhere)』
「足元を見つめた先にある世界」
第16回目は、90年代初頭にUKで台頭してきたジャンル「シューゲイザー」を確立した「Ride」より、デビューアルバムの『ノーホエア(Nowhere)』です。
「シューゲイザー」とは、shoe(靴)をgaze(見つめる)人を表し、このジャンルの人たちが下を向いて演奏している姿から来ています。
本作はシューゲイザーを代表するアルバムで、Universe Publishing社の「死ぬ前に聴くべき1001枚のアルバム」にも選出されています。
曲目は以下の通りの全11曲(8〜11曲目はCD版のみのボーナストラック)です。
1.『シーガル(Seagull)』
2.『カレイドスコープ(Kaleidoscope)』
3.『イン・ア・ディファレント・プレイス(In a Different Place)』
4.『ポーラー・ベアー(Polar Bear)』
5.『ドリームズ・バーン・ダウン(Dreams Burn Down)』
6.『ディケイ(Decay)』
7.『パラライズド(Paralysed)』
8.『ヴェイパー・トレイル(Vapour Trail)』
9.『テイスト(Taste)』
10.『ヒア・アンド・ナウ(Here and Now)』
11.『ノーホエア(Nowhere)』
冒頭1曲目の『シーガル(Seagull)』で幕を明けます。
荒々しくもどこかポップさが残っていて、1分ほどある長めの前奏が、この後どのようにアルバムが展開していくのかと、期待を膨らませてくれます。
間奏部分で激しいギターの壁が聴手を襲い、当時の人々は、今まで聴いたことがないサウンドに相当な衝撃を受けたことでしょう。
その後も、耳障りが良くもどこか哀愁のある演奏が展開していきます。
そして5曲目の『ドリームズ・バーン・ダウン(Dreams Burn Down)』です。
この曲を初めて聞いたときの衝撃は未だに忘れられません。
美しいメロディと唸るギターの轟音の対比。そして、夢が破れた儚さを歌う歌詞。
シューゲイザーを象徴する曲と言っても過言ではないでしょう。
実は「RIDE」の存在は、以前紹介した記事で登場した私の従兄弟に教えてもらったことがきっかけで知りました。
それまでハードロックなどの直情的で熱いロックばかり聴いていた私にとって、このようなジャンルは未知の世界でした。
普段内向的で内に秘めた思いが強いほど、ロックの世界ではその表現力が凄まじいものになるのではないでしょうか?
8曲目の『ヴェイパー・トレイル(Vapour Trail)』は、アメリカの音楽メディアである「ピッチフォーク・メディア」により’90年代のベストトラックTop100’の81位に選出され、冒頭のリズミカルなバッキングが印象的な、正に90年代を代表するのにふさわしい曲です。
本作発表後、RIDEは3枚ほどのアルバムを発表したのちに一度解散します。
(ボーカルでギターのアンディ・ベルが、その後「オアシス(Oasis)」に加入して何故かベースを演奏していたのは、知る人ぞ知るエピソードですね。)
その後、2014年に再結成し、2枚のアルバムを発表しています。
90年代初頭に突如現れ、その後のブリットポップのブームにより短命に終わってしまったシューゲイザーですが、その世界観が見直されて再び盛り上がっていくことを、RIDEの動向に注目しながら見守っていきたいと思います。