『重力波で繋がる過去と未来、思いで繋がる現在への贈り物』
【あらすじ】
女子高生のアスカが、初めて1人でスカイダイビング。白い雲を突き抜けてパラシュートを開いた。
降り立った世界は、アスカの知らない世界。
その世界は2029年よりも進んだ世界。人工知能も遥かに優れ、ホログラムが自由自在に操られる。
人工知能の果てしない欲求と進化の末路とは!?
アスカの目にした一つの世界、その終焉とは!?
2031年、重力波から受け取る現代へのメッセージ、アスカが我々の世界に警鐘をならしているのかもしれない。
(※最終章のアスカの言葉の日付けは、小説家になろう〜バックアップ重力波〜2021.3.17のことです※)
【第1章 初めてのスカイダイビング】
2029年10月31日、朝七時半、コケッコッコー、鳴り響く音にもアスカは目を覚さない。母親のフミカは階段の下から、覗き込みアスカに声を上げた。
「早く起きなさい、アスカ、遅れるわよ」
布団からゆっくり手を伸ばし鶏の目覚まし時計を布団の中に引きずり込んだ。コケッ、コケッと鶏が咳き込むように鳴きやみ布団から鶏が頭を覗かせた。
それと同時にアスカは布団をはねのけ起き上がった。
「やばい、やばい、三回もアラームを鳴らしたのに、お母さん」とアスカは、独り言を言う。
パジャマから服に着替え、階段を勢いよく降りる。絶妙なバランスで、足を階段から踏み外すことなく降りた。
洗面所で用意をしていると、
「お姉ちゃん今日も寝坊してたの? 今日のニュース見た?」と弟のヤヒコが宇宙の図鑑を持ちニヤニヤしてきた。
「今、起きたんだから、見てないよ、何かあったの」とアスカが伝えると、
「ペテルギウスが暗くなってるんだって、ガスが大量で爆発するかも!」と興奮している。
ヤヒコは、小学三年生で宇宙好き、時折、宇宙の図鑑を見せてくるが、アスカは全く興味がない、「それは何? すごいの? また後で見るね」と準備を進めた。鏡を見て最後にヨシと自分に気合を入れた。
今日はアスカにとって特別な日、一人でスカイダイビングする許可が出たのだ。
食卓に着くと、父親のマコトが、ニュースを見ながら、アスカに気づき「おはよう、よく寝てたな、ご飯食べて、神社にお参りしてから行こうか」
「お父さんが神社行くなんて珍しいじゃん。でも私も行きたいな」テーブルには、トースト二枚とゆで卵、ウインナーが置いてあり湯気が立ち昇る。食べながらニュースを見ているとまたヤヒコが来た。
「お姉ちゃん、このニュースだよ、オリオン座は三つの星が並んでるんだ、ペテルギウスは左上だよ。波がくるかも、ヒューン」とヤヒコは、身体で波を表現しながらまた立ち去った。
食事を済ませ、荷物を二階から下ろす。ガレージから車のエンジンがかかる音がして、急いで、靴を履き荷物をトランクに積んだ。フミカがアスカに気をつけてねと伝え、アスカは頷き助手席に座る。マコトが行ってくるよと手を上げて合図した。
「じゃまず神社に行こうか」とマコトが言って車を出した。
近所にある神社は、生命を司るとされる岩を納めていることで有名、アスカが幼い頃からよく遊び場としていて、高校二年生になった今でも、時々、立ち寄っては、手を合わせに行っていた。宮司さんとも顔見知りだ。
駐車場に車を止め、鳥居の前でお辞儀をして手を洗いお参りをする。階段を上がり、両脇の狛犬に会釈をした。お賽銭を入れて、鈴を鳴らす。
「無事に一人でスカイダイビングが成功しますように」と祈願した。
駐車場に向かう途中、宮司さんが竹箒で掃除をしている横を通り過ぎる。
「マコトさん今日も来られたのですね」と宮司さんは挨拶をした。
「ええ、今日は、アスカの初ダイビングなんですよ」とマコトが伝えると、「どうぞ、ご無事で」と宮司さんはお辞儀をした。
車に乗り込み、アスカはマコトに問いただす。
「お父さん、昨日も神社に行ったの?」とニヤニヤしてアスカが聞くと、
「なんのことだ?」と、とぼけるように答えるマコト。
「ありがとう、でも心配しなくていいよ。お父さんと一緒に飛んで、パラシュートを開くタイミングが身にしみているからね」
「それは、頼もしいな」
「だって、いつもヨシッって大きな声で言うんだもの、かってに体が反応しちゃうわ。だから、きっと大丈夫だよ」
「そうだね。あんだけ練習したもんな。最後は神頼みだよ」
「やっぱり、昨日も神社に行ってくれたんだね」
「はははは、これは一本取られたな」
アスカは、マコトの優しさにふれ、安心して初ダイブ出来ることを確信した。
スカイダイビング場に着いて、車から荷物を取り出していると隣に車が止まった。
運転席から従兄弟で大学生のクニハルが降りて来た。
「おはよう、アスカちゃん、今日の調子はどうだい?」
「今日の調子はいいよ、朝寝坊しちゃったけど、そのおかげで頭はスッキリだよ」とアスカは、クニハルの問いに答えた。
「それは、いいや、初ダイビングで気失うより、しっかり寝て気分スッキリがいいね。僕は初ダイビングの前の日は全く寝れなくて頭がボッーとしてたもんね」と苦笑しながらクニハルは答える。
「クニハルも今日は気を引き締めて飛べよ」とマコトが伝える。
三人は荷物を運びながら所属しているスカイスクールの入り口に足を運ばせた。
ガラガラとドアを引くとヘリコプター操縦者のダニエルが天候の確認を行なっていた。
「おはよう、ダニエル。今日はよろしくね」とアスカが声をかける。
ダニエルは、パソコンの画面から目を離した。
「おはよう、アスカ、マコト、クニハル、今日はやや曇ってるけど、フライトに問題はない。準備は出来ているか? ヘリコプターに荷物を入れて置いてくれ、三十分後には、地上四千メートルにいるぞ」と落ち着いた様子でダニエルが答える。
三人は、ヘリコプターに荷物を乗せた。出発までの残りの時間、アスカは一人、ヘリコプターの中で目を閉じて、パラシュートを開くタイミングのイメージトレーニングをしていた。
バタンと音がしてダニエル、マコト、クニハルが乗り込んで来た。
ダニエルは操縦席から後ろを振り返り、「アーユーオーケー?」と尋ねた。
三人はオーケーと親指を立てて合図した。
ヘリコプターのプロペラがブンブンと加速して、ブーンとひとつの音になるとフワッと揺れて空中に浮いた。ヘリコプターは、そのまま加速し、空高く舞い上がった。
窓の外は地上から、どんどん離れて車がミニカーのようになり、見えなくなった。遠くに見えていた山が近くに見えて、その山もまた、小さくなり、やがて青空が広がりところどころに雲が見えていた。青と緑のコントラスト、白い雲がまるで、クッションのようにアスカを包み込んでくれるような感じがした。遠くには、海も見えて、太陽の光が反射してキラキラ輝いている。何回見ても美しいとアスカは、そう思った。
「着いた!」とダニエルが振り返り親指を立てた。その親指でドアを指差し行ってこいと合図する。
それに答えるようにして、三人はパラシュートを背負い、ヘルメットにゴーグル、手袋をした。マコトがドアを開けた。風がヘリコプターの中に入り込んでくる。
マコトはクニハルに親指で合図し、クニハルはドアの方に行き
「行くぞー」と叫びドアから勢いよくダイブした。
マコトは、アスカを手招きして、アスカの肩を叩き気合を入れた。
「大丈夫だ、楽しんで来い」と笑顔を見せた。
アスカは、ヘリコプターのドアベリを握り締め顔を突き出し外を見た。青い水平線が広がり太陽が照りつける。雲の隙間から地上が見えた。
気持ちを落ち着かせて、握り締めていた手をゆっくり離し、ヘリコプターを蹴って身体を青い世界へと投げ入れた。
体感速度が増えてゆく。
フリーフォールポジションを取ると身体が安定して来たと同時に、気持ちも安定した。
「私、飛んでる、これぞスカイダイビング!」と叫ぶ。
先に飛んでいたクニハルが見えたが、雲の中に入り込み、やがて、アスカも白い世界に身体が包み込まれ、目を閉じた。身体の感覚を研ぎ澄ます、落ちてる感じでも、飛んでる感じでもない。まるでベットに寝ている感じ、身体の重たさは何も感じない。一人で飛んで不安も感じなかった。
時が止まり永遠の世界にいるような気分になった。目を開き雲を抜けてヨシッと言ってコードを引き抜き、パラシュートを開く、身体の重みを感じながら、目標地点の緑の芝生を探すが、森が広がり、その先には、小川が流れて、辺り一面が美しい花畑が広がっていた。
風に流され、アスカは花畑に横たわるように着地、体が花を押し付けて花の茎が横倒しになるのを感じた。それ同時に花ビラが舞い上がりいい匂いがする。横たわった茎を手で押さえつけ立ち上がり周りを見た。
「ここはどこ?」
風に流されて着地地点がずれてしまったのだと思った。パラシュートを片付けていると、近くの道路に一台の車が止まり、一人の男性が近づいて来た。
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