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#読書のキロク 『子どもたちの階級闘争〜ブロークン・ブリテンの無料託児所から』

UKの貧困地区にある慈善センターの託児所での体験を通して社会の分断を見つめた本。ブレイディみかこさんの飾らない、まっすぐな言葉でリアルなロンドンが描かれる。その目線はとてもフェアだ。

裕福な子どもと貧しい子どもたちの分断は、まったく触れ合うこともない、いわばパラレルワールド。子どもはじぶんが置かれた状況に時にあらがい、泣き、暴れ、あきらめ、最後には淡々と受け入れる。まだ小さな子どもたちが全身で環境を受け入れようとする様子は読んでいて痛々しくもあり、それでいてきちんと明るくもある。

これは遠い国の話?そんなことはない。自粛期間を通じて、すでに私たちは子どもたちの教育機会が平等ではないことに気づきはじめている。オンラインの学びがすべての家庭で可能だったか、と考えるだけでもそこにある見えない壁が見えてくる。2020年7月17日に発表された2018年の日本の子どもの相対的貧困率は13.5%、国内の約7人に1人が貧困状態にあるという水準は、世界的に見ても決して低くない。

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」で描かれたフードバンクのシーンがよみがえる。いつだって、政治の影響を即座に、直接的に受けるのは弱者なのだと、気づかされる。

「政治は議論するものでも、思考するものでもない。それは生きることであり、暮らすことだ」

著者の放つ、この一言。私たちも、政治を遠いものとしてとらえるのではなく自分ごとにしていかないといけない。改めてそう考えさせてくれた一冊です。

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