言葉にならないものごとに名前をつけてゆくのも接客の力
5月に買ったBRUTUSを熟読しました。
「一行だけで。短歌、俳句、歌詞、名言 明日のための言葉300」
特技は「積読」の私ですが、基本的に文学が好きです。
理由をあらためて考えたことはなかったのですが、これを読みながら
「『言葉にならない思い』を、他者と共有するために言葉にしていく行為は美しくて、私はそれが好きだな」と思いました。
つきあいの長い友人とは、よく「自分の中に湧きおこる正体不明のわだかまりを、歳を重ねるごとに言語化できるようになって、生きやすくなったよね」と話しています。
わかりやすい例としては「自分は低気圧に弱い」とわかっていれば、雨の前日の体調&気持ちの落ち込みに動じないですむ、というようなこと。
「 これが得意」「自分はこういう思考をしがち」「こういう人が好き/苦手」など、言語化して自分を俯瞰することが自分の助けになるなぁと実感しています。
自分の取扱説明書を少しずつ増やしていくようなものですね。
逆に言えば、ふだんは自分自身のことですら、なかなか明確に理解できていないものです。
さて。
接客体験も、自分自身が理解できていない要素を言語化してもらえる時間だと思っています。
たとえば服を買うとき。
そもそも、自分が好きなもの、ほしいもの、自分に似合うものをどれくらい明確に言えるでしょうか?
私は買い物に行くとき、たいてい「 今の時期に着るの、いい感じのもの…」「 〇〇の時に着ていくもの…」くらいしか言語化できていません。
そういう時に店舗で、私が手に取るものをさりげなく見たスタッフさんから
「 こちらの商品や、先ほどご覧になっていた商品のような、ストンとした縦長のシルエットがお好きでしょうか」
と言われると、自分自身の行動なのに「言われてみれば、 たしかにそうだな」と思ったりします。
試着して、あぁ良い感じだな···と思っている時に
「横を向いた時に、ここのラインが身体に沿うと〇〇ですので、お客様は、ここを合わせて選んでいただくと良いかもしれません」
と、自分がなんとなく抱いた「良い感じ」の正体(理由)を教えてもらえることもあります。
これらの言葉は、自分でも理解しきれていない自分の姿や思いを明らかにしてくれるものです。
実際にその服を着るときの自信になりますし、こういう経験を重ねることで、自分の好きなもの、似合うものが少しずつ明確になっていきます。
「可愛いです」「お似合いです」と気持ちを高めてもらえる接客も、もちろん素敵で嬉しいものですが······
販売のプロフェッショナルから「 あなたは、こういう人ではないですか?」という客観的な情報をもらえるのは、とても貴重で、ありがたいことだなと思うのです。
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