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米国の追加関税措置で注目される新興国(中国製アパレルは約10%のコスト上昇)
2025年2月1日、トランプ米大統領は中国からの輸入品に対して10%の追加関税を課す大統領令に署名しました。
中国に対する10%の追加関税の影響
これにより、中国製の衣料品を含む多くの製品のコストが上昇し、特に中国のファストファッションブランドであるSheinやTemuに大きな影響を及ぼすと予想されています。
さらに、これらの企業は従来、800ドル以下の小包を関税免除とする「デミニミス」制度を活用していましたが、今回の措置でこの制度が適用されなくなり、全ての輸入品が関税の対象となります。これにより、商品の価格上昇や配送の遅延が予想され、消費者にも影響が及ぶと考えられます。
このような関税の引き上げは、米国の消費者にとっても価格上昇を招く可能性があり、特に低価格の商品を求める消費者にとって負担となることが懸念されています。
中国製品のコストが上昇することで、恩恵を被る国
米国が中国製品に対して追加関税を課すことで、中国からの輸入品のコストが上昇し、米国の輸入先が他国へシフトする可能性があります。
特に、ベトナム、インド、インドネシアなどのアジア諸国が恩恵を受けると考えられます。これらの国々は、労働力が豊富で製造コストが比較的低いため、アパレル製品の生産地として注目されています。
実際、GapやRalph Laurenなどの米国の大手ファッションブランドは、近年、中国からの調達比率を減らし、ベトナムやインドなどへの生産移転を進めています。例えば、Gapは中国からの輸入比率を2018年の21%から現在の10%にまで引き下げています。
ただし、今回の関税措置では、中国だけでなく、メキシコやカナダからの輸入品にも25%の関税が課されるため、これらの国々が直接的な恩恵を受ける可能性は低いと考えられます。
アパレルと言えばバングラディッシュ
バングラデシュは中国製品への追加関税により、恩恵を受ける可能性が非常に高いと考えられます。特に、バングラデシュは世界有数のアパレル製造拠点として成長しており、中国に代わる輸入先として注目されています。
理由と背景
世界第2位のアパレル輸出国
バングラデシュはすでに中国に次いでアパレル製品の輸出で世界第2位の地位を確立しています。主要な輸出市場は米国と欧州連合(EU)であり、米国市場でのシェアを拡大する好機と捉えられています。低コストの労働力と生産能力の高さ
バングラデシュは安価な労働力を持つことが強みであり、Tシャツやデニムなどの低価格商品を大量に生産できるインフラが整っています。中国からの輸入コストが上昇すれば、米国のバイヤーはコスト削減のためにバングラデシュからの調達を増やす可能性があります。既存の米国市場でのプレゼンス
すでにH&M、Zara、Walmartなどの米国企業がバングラデシュで製造するアパレルを大量に輸入しています。追加関税によってこれらの企業はさらにバングラデシュからの調達を増やすと予測されています。米国の「普遍特恵関税制度(GSP)」
バングラデシュはGSP制度により、特定の輸出品に関して関税優遇措置を享受しており、中国製品の関税が上がる中、競争力を一層強化する可能性があります。ただし、アパレル製品はGSPの対象外であることに注意が必要です。
リスクと課題
労働環境への監視強化
米国や欧州はバングラデシュにおける労働環境と安全性に厳しい目を向けており、改善が進まなければ輸出の拡大に制限がかかる可能性があります。
結論
全体的に見て、米国の追加関税はバングラデシュにとって輸出拡大の好機であり、中国からの輸入シェアを奪う形で恩恵を被ることが十分に考えられます。