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何故か、祖母に似ている。

今日は皮膚科に行って、頬のできものの処置をしてもらった。診察後、塗り薬の他に2週間分の飲み薬が処方された。炎症をおさえたりビタミンを補ったりするためのもので、錠剤・カプセル・顆粒の3種類。朝と夕の食後に服用する。

帰宅して、紙袋から飲み薬を出した時、私はある衝動に駆られた。

「薬のシートをすべて切り離して、1回分ずつのセットにまとめたい」

今までやったこともないのに、妙にやってみたくなって、もはや、やらずにはいられない気がしてくる。……この行動、どこかで見たことがある。この発想は、誰かに似ている。これはもしかして、“血“なのかもしれない。

私が思い出したのは今年96歳になる祖母だった。

私の祖母はいつも、診療所で出された薬をひとつひとつ几帳面に切り離し、1回分ずつに小分けにするのだ。よく、高齢になると「さっき薬を飲んだかどうか忘れてしまう」なんて話を聞いたことがあるが、祖母は基本的にそんなことがない。確かに、何ヶ月か前に会った時、「今日、薬を飲み忘れちゃったの」と気を落としていたが、「今までね、私、薬を飲み忘れとことが2回もあるのよ」なんて言っていた。「2回飲み忘れたことがある」という事実を忘れずにいるだけですごいじゃないか……。

とにかく、私は薬のシートを切り離しながら、自分に祖母の血が流れているのをひしひしと感じた。人の性格とは、周りの環境によって形成されるものであり、遺伝によるものではないと思ってきた私だが、何故か最近になって、「自分の中の祖母」が疼く気がするのだ。

しかし、よく考えてみれば、幼いころから祖母に似ていると何度か言われていた気もする。根詰めて肩が凝るところ(子供の時から私はよく肩が凝っていた)、根に持つところ、しつこいところ……。なんだか、悪いところばかりだな。

手を動かしながら考えているうちに、全ての薬を切り離し終えた。お菓子の缶の中にきれいに並べてみる。これで1回分が取り出しやすくなった。何だかとても気持ちがいい。これを目につくところに置いておけば、飲み忘れることもないだろう。

祖母に似たお陰で、2週間分の薬を最後まで忘れずに飲み切れそうだ。



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