『#Eぐみに会いに行く。』vol.5 〜初夏の芽室より〜【後編】
高校時代の同級生へのインタビュー企画 #Eぐみに会いに行く。今回は、企画初、本州を飛び出して、北海道・十勝地方の芽室町までやってきました。お話を伺ったのは、約6年前にここに移り住んだYさんです。前半では、移住の経緯について伺いました。後半では、十勝の農業やYさんのこれからについておききします。
『#Eぐみに会いに行く。』
vol.5
インタビュアー・神田朋子
農業のはなし
神田:ほんとうに芽室町って素敵なところだね。景色もいいけど、さっきここに来る途中で食べた豚丼も最高だったなぁ〜。口に入れた瞬間、噛む前からお米が美味しいのが分かったもん!
Y :それは良かった(笑)。
神田:素材ひとつひとつが新鮮で、味が濃くて。私もちゃんとそれに向き合って食べなきゃっていう気持ちになるよ。
Y :農家さんたちが、ほんとに一生懸命、大切に作ってるからね。農業って、種を撒いたり肥料を使ったり、とにかくすごくお金がかかるんだ。でも、育てた分のお金が農家さんに入ってくるのは、収穫してみんなに食べてもらった後なんだよ。つまり、投資に対するバックにすごく時間がかかるの。
神田:そうか。お給料みたいに毎月決まったお金が入ってくるわけじゃないんだね。
Y :そう。スタート資金もけっこう必要になるから、簡単に始められるものではないし。
神田:じゃあ、農家さんの数って年々減少してるの?
Y :うん、減ってるね。いちど実家を離れた農家のお子さんが、戻って来て継ぐ場合もあるけど、新規で農業を始める若い人たちはごく一部かな。十勝は1経営あたりの耕作面積が広い分、経済的には安定してるから、農業一本でもやっていける場合が多いんだけどね。
神田:そうなんだぁ。
Y :近年課題になってるのは、海外から輸入する農業用機械の価格高騰。レアアースとかコロナとかの影響で、輸入価格がどんどん上がってるの。
神田:農業用のトラクターって、海外から輸入するの?
Y :十勝の農業は、広大な面積を一度に収穫する欧米型の農業だからね。すごく大きいトラクターが必要になるんだ。
神田:へぇ!
Y :そのトラクターが1台数千万円もしたら、農家の経営を圧迫しちゃうでしょ。一方で、国内で消費される農作物の値段って、どう? 上がってると思う?
神田:うーん。その時々の天候の影響で高くなることはあるよね。
Y :そう。不作のせいで、市場に出回る野菜の数が減って値段が上がることはある。でも、農家さんがたくさん投資してる割には、ベースの値段が上がってないんだよ。ちょっとでも高くなると、買う側は隣にある輸入ものを選んだり、「別に野菜なんて食べなくていいや」って別のものを選んだりしちゃう。
神田:それは私も消費者として、心当たりがあるなぁ……。
Y :同じ耕作面積でも、たくさん収穫ができればよりお金が得られるから、そういう努力はみんな当然してる。でもその努力だって、天候次第では水の泡になっちゃうんだ。だから生産者としては、大切に育てたものを売り切りたいし、ひとつぶ残さず食べてほしいと思うんだよね。
食料自給率の課題
Y :農業と切っても切れないのが、食料自給率の話だね。
神田:食料自給率? 聞いたことはあるけど、私、よく分かってないかも。
Y :国内で消費された食料のうち、国内で生産された食料がどのくらいあるかっていう数字なんだけど。カロリーベースで計算すると、十勝の食料自給率は1000パーセントを超えるんだよ。
神田:1000パーセント?! つまり、生産量が消費量をはるかに超えてるっていうことか。
Y :直近のデータでは、日本全体の食料自給率は38パーセントしかない。つまり、日本は自分たちの動力源の半分以上を外国産の食べ物に頼ってるということになるんだよね。
神田:じゃあ、もしも海外からの輸入がストップしたら……。
Y :大変なことになる。だから日本の食料自給率の低さは、長年、国の課題にもなってるんだ。つまり農業に関わる仕事をするっていうことは、その課題に挑戦し続けることでもあるんだよ。でも、だからこそ農業に関わる仕事は面白し、やりがいがあると思うんだ。
神田:私も次からは産地を見て買うようにしよう! ついつい値段にばっかり目がいっちゃうんだけど。
Y :うん。芽室産のじゃがいもを見たら、ぜひ手に取ってみてね!
芽室に遊びに来てほしい!
神田:ところでYくんはこの先、何かやりたいことはあるの?
Y :うーん。やっぱり、自分の子供のためのことをやっていきたいかな。子供たちが挑戦したいと思うこと、そうじゃなくても心が折れそうな時に 、続けられるようにサポートしていきたいなって思うよ。
神田:高校生のとき、Yくんはテニス部だったよね? お子さんもテニスをやってるの?
Y :うん。この先も続けていってほしいからね。これからはそのサポートもしたいな。
神田:楽しみだね。家族との時間も大切にできるし、移住して本当によかったね!
Y :まぁ、もしかしたらこの先後悔することがあるかもしれないし、まだ何が起きるかは分からないけどね(笑)。でも今のところは大正解だし、それにほら、見ての通り元気そうでしょ?
神田:うん、とっても元気そう! それに何だか、すごく嬉しそうだよ(笑)。
Y :だって本当に嬉しいんだよ、友達がここに来てくれるっていうのは! 何なんだろうね、この感覚。生まれ育ったところでもないのに、「芽室に来てくれてありがとう!」って思うし、芽室をみんなに紹介したい気持ちになっちゃうのさ。
神田:出来るだけたくさんの人に、ここの素晴らしさを味わってほしいよね。
Y :ほんとにね。素敵なところだから、一度遊びに来てほしいな。
神田:私も、あらためて別の季節にお邪魔したいと思います。Yくん、今日は本当にありがとう。とっても楽しかったよ!
Y :うん。ぜひまた来てね!
(取材日:2023年7月5日)
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