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夕方、フライパンでシシャモを焼いた。

うちには魚焼きコンロがないから、フライパンで焼くしかない。油を使うから、カロリーが心配ではあるのだけれど。狭い部屋が魚臭くなってしまうので、窓を開け、換気扇を回す。案の定、それでは間に合わないくらいの香ばしさが揚げ焼きのシシャモから立ちのぼる。

「こりゃあ、野良猫が寄ってくるんじゃないか?」なんて心配になったが、猫はきっとそんなにバカじゃない。ありつける見込みのない民家の焼き魚に寄って行こうなんて、きっと思わないのだ。そもそも焼いた魚よりも生魚の方が好きかもしれない。

生魚といえば、実家にいた頃は毎年母が節分の日にヒイラギの枝を用意して、生のイワシの頭を刺して玄関に飾っていた。あれにも猫は寄って来なかった。きっと猫は猫なりに、食べるものとそうでないものを区別しているのだろう。

それにしても、2月3日に台所で生のイワシの頭を素手でちぎる母の姿は印象的だった。なぜ包丁で切らなかったのか。なぜ焼いてから刺さなかったのか。「そうしなければならない」、というようなことを母は言っていたけれど、私にはそれが正式な風習ではなく、いつもの母の思い込みに思えてならない。

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