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雨の日タイムトリップ
今日みたいな雨の日は、嫌いじゃない。
休みの日でも、できるだけ1度は外に出る。長靴を履いて、傘をさして、近所のコンビニまで行くことにした。
空は白に近い灰色で、雨がしとしとと降っている。スイミングスクール帰りの子供達が、はしゃぎながら私の横を駆けて行った。傘を打つ雨音に混ざって、鳥の鳴き声が聞こえる。頭上を過ぎる旅客機の音が、あたりにごーっと響く。たくさんの音が溢れているのに、なぜか晴れの日よりも静かに感じる。
中学校の校舎の脇を通る。雨に濡れた建物や道端の雑草が、何だかとても眠そうだ。こんな雨の日は、現在と過去が平気で混ざる。校舎のどこかに25年前の自分がいるような気がして、立ち止まった。体育館の小窓から、息を潜めてこちらを伺っているのかもしれない。
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雨は視界に、音に、私の意識にベールをかける。そこには、今と昔が溶け合った「閉ざされた世界」が出来上がる。
あの頃ぼんやりと想像しながらも、はっきりとは想像するのを避けていた未来に、今、自分が立っている。今の私の姿は、想像していた通りのような、違うような——。
穏やかな晴れの日も好きだけど、今日のような雨の日は、タイムトリップにちょうどいい。