夜風とフィナンシェ
土日に忙しく動き回っていたせいで、今日は疲れて早めに帰宅した。しかし、なんだか気持ちも身体も休まらない。
網戸の向こう側で吹いている夜の風の音に、少し心がざわざわさする。昨日の忙しさの余韻が、身体のどこかに残っていて、神経がたかぶっているようだ。
普段なら気にならないことが気になったり、何を考えたら良いか自体、分からなくなったり。
紅茶を淹れ、いただき物の焼き菓子の箱を開ける。どれも美味しそうで、眺めているだけで元気になれそうだ。特に私が目をつけていたチョコを練り込んだお菓子は、すでに家族に取られてしまっていた。目移りしながらも、心を決めてフィナンシェを手に取る。
ひとくちかじれば、もう、至福のバターだ。温かい紅茶の香りとともに、フィナンシェの甘さが私をなだめてくれる。
ざわついていた気持ちが、少し落ち着いた。数日前まで、過ぎ去る時間の早さに不満を言っていたのに、今夜だけ時間が止まっているようだ。
明日は5月さいごの日。気合を入れて乗り切らねばと思った。