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醤油差しを譲り受ける

また祖母から食器のお下がりをもらって来てしまった。

祖母の家が建て替えを控えているため、ここ数ヶ月、祖母は叔母たちと一緒に家財道具の整理をしている。洋服はひと通り片付き、今は食器を分別しているところだ。もともと私が祖母の家に行くのは月に1回程度だったが、最近は古い家への名残惜しさもあり、毎週のように通っている。

私の家は収納部分が少ないので、お下がりを勧められても気安く引き取るわけにいかない。しかし、祖母の食器棚の奥から良さそうな皿が出てくると、思わず受け取ってしまう。先週はノリタケのカップとソーサーを5客もらって来てしまった。今日もノリタケの平皿を、大小2種類譲り受けた。目についた食器を裏返すと必ずと言っていいほどノリタケと書いてある。私は本能的にノリタケが好きなようだ。

今日はそのほかにも、醤油差しをもらった。私はそもそも、空気に触れない構造の容器の醤油を買っているから、わざわざ醤油差しに醤油を移すことがない。しかし祖母の家にあった醤油差しは、ちょっと思い出深いのだ。

亡くなった祖父は豆腐が大好きで、冬は湯豆腐、夏は冷奴を欠かさなかった。祖父母の家で夕食をご馳走になると、必ず食卓にはその醤油差しがあった。何の変哲もない醤油差しだけれど、妙に懐かしくなって欲しくなってしまった。

親族で祖母の持ち物を分けていると、高価なものや丈夫そうなものばかりが引き取られていくような気がしていた。しかし、この醤油差しのように、思い入れひとつで受け継がれていくものもあるのだ。私も今夜は、久々に豆腐を食べようと思う。

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