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黄色い花

アパートのドアを開けると、足元に黄色い花が咲いていた。ちょうど敷居と中庭の境目のところだ。直径5ミリくらいのかわいらしい花である。

実はこの「敷居と中庭の境目」を見るのは、私にとってちょっとした楽しみだった。いつもはクローバーに似た形のカタバミの葉が顔を出していて、玄関を出るたびに、「今日は良いことがある」というおまじないをかけられている気分になった。たまに中庭の整備やおそらく猛暑の影響で姿を消すこともあったが、それでも根気強く復活するのだった。

引っ越して2年経つが、花が咲いているのを見たのは今回が初めてだ。いつものカタバミの方ではなく、花は、小ぶりのタンポポの葉のようなものの間から3輪ほど顔を出していた。

基本的に楽しく毎日を送っているけれど、生きていれば、心配事が頭をもたげることもある。突然我が家に訪れたこの黄色い花は、私を応援してくれているのかもしれない。

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