歩道を横断
今日は一日中、家で集中しする作業をしていてくたびれてしまった。外が暗くなってから、トイレットペーパーがなくなったことに気づき、散歩がてら商店街まで買いに出かけた。
途中にある国道を、腰の曲がったお婆さんが、重そうなカートを引きながら渡ろうとしていた。その動きがものすごくスローモーションだったので、気になって声をかけた。「ひとりで大丈夫だよ」と断られたが、どう考えても危なっかしい。結局、私も一緒に横断歩道を渡った。
車道を渡り切ると、おばあさんは、なんどもなんども私にお礼を言った。「あなた、どこかで見たことのあるような、綺麗な顔だねえ」ーーご丁寧に、そんなお世辞まで言ってくれる。たぶん、「芸能人の誰かに似ている」と言おうとしてくれたのだろう。
今日は何だか、道徳の教科書にでも載っていそうなことをした。そう思いながら、トイレットペーパーを片手に夜道を歩く。お世辞だとわかっていても、おばあさんが言ってくれた「綺麗な顔」という言葉が、ちょっと嬉しかった。
横断歩道を渡るたびに、そんなことを言ってもらえるなら、何十回でもおばあさんと一緒に渡れるなぁ。
ーー大人になった私の中にある道徳の教科書には、邪念が追記されているようだ。
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