『#Eぐみに会いに行く。』vol.8 【前編】 Aくん&にっくん&神田inニューヨーク
高校時代の同級生へのインタビュー企画#Eぐみに会いに行く。Vol.8となる今回は、ニューヨーク在住のAくんにお話を伺うため、初の海外へ! 前回(vol.7)のインタビュイー・にっくんも合流し、3人でお話をさせていただくことになりました。
※会話の流れに沿っていないものもありますが、現地の写真と共にお楽しみ下さい。
『Eぐみに会いに行く。』
Vol.8
【登場人物】
Eぐみの3人、ニューヨークで再会。
神田:それでは早速、よろしくお願いします!
Aくん・にっくん:お願いします!
神田:今回は、ニューヨークで合流したにっくんと一緒に、Aくんにお話をきいていきたいと思います。
Aくん:にっくん、かんちゃん、おひさしぶり、よく来てくれたねえ。
にっくん:めっちゃ棒読みじゃん(笑)!
Aくん:あれ? 今までのEぐみのインタビュー記事って、こんな始まり方じゃなかったっけ?
神田:……そういうのは気にしなくていいから、普通に話して下さい(笑)。4日前から、ほぼ毎日この3人で会ってるんだし。
にっくん:俺とかんちゃんがニューヨークに来て、もう4日経つのか。
Aくん:あっという間だね。
にっくん:5番街を巡ったり、タイムズスクエアに行ったり……。
神田:グランド・セントラル駅も素敵だったね。ブルー・ノートで生演奏を聴けたのも良かったなぁ〜。
にっくん:それにしても、卒業から20年以上経って、高校の同級生とニューヨークで会うことになるなんてね。
神田:あのころは想像もしなかったな。まぁ、大人になってみると、イメージと違うことが多いけど。特に仕事なんて、同じ肩書きでも人によってやってる内容が全然違うこともあるし。そういう意味で#Eぐみに会いに行く。は、今高校生の人たちにも読んでもらいたいと思ってるの。
にっくん:それこそ俺らがEぐみだったころの年代の人たちが読むイメージね。
Aくん:じゃあ、それを意識して喋るわ。
神田:ところでAくんは、なんで弁護士になろうと思ったの?
にっくん:確かAは親族にも法曹関係の人がいたよね。
Aくん:そうだね。色々な説明の仕方ができるんだけど。まぁ、進路とか職業って環境要因が大きいと思うんだよね。身近な人が関わってると、とっつきやすいっていうのもあるし。
にっくん:確かに。知らないからこそハードルを感じるっていうのはあるかも。
Aくん:でも高校の時は今の仕事をやろうなんて全然思わなくて、大学では物理を専攻したんだ。知り合いに理系の人が多かったのもあったし、物理って色んな技術の基礎になってるから、やっておけば自分の可能性が広がると思って。
神田:じゃあ、弁護士になろうと思ったのは、ずっとあとになってから?
Aくん:そう。技術を社会で活かすためには法律って大事だって気づいてね。色々やっていくうちに、法曹の仕事に興味をもって。結局、自分の可能性が広がると思った方向にその時々で進んできた感じだね。
「学級文庫」を覚えていますか?
Aくん:環境要因って言っても、身の回りのちょっとしたことも含まれると思うんだ。例えば、高校の時の、Eぐみの学級文庫、覚えてる?
神田:学級文庫?
Aくん:教室の前のほうの、左側に本棚があったでしょ?
にっくん:あったね。担任の先生がEぐみのために本を用意してくれて。
神田:そうだっけ(笑)。先生、そんなことしてくれてたんだね……。
にっくん:うん。哲学とか心理学関連の本が多かったかな。少しずつ増えていって、最後には結構な冊数になってた。クラスの中でも、あの文庫周辺で盛り上がってたメンバーがいたよ。
Aくん:本を読むのは苦手だったんだけど、そこにあった野矢茂樹さんの『無限論の教室』っていう本が面白くてね。薄い新書で、手に取りやすかったんだ。
神田:それ、にっくんも読んだの?
にっくん:うん。「語り得ぬものについては沈黙しなければならない」だよね?
Aくん: いや、それはウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』だね(笑)。かんちゃんは興味ないかもだけど、野矢さんは哲学者のウィトゲンシュタインの研究者としても知られてて。
にっくん:そうだった(笑)。そういえば、そのあたりの本を大学生の時にAから借りたね。
Aくん:懐かしいな~。
神田:何だか全然話についていけないぞ……。
にっくん:(笑)俺は大学で心理カウンセリング学科に進んだんだけど、学級文庫で哲学に興味を持ったのも、もともと心理学に興味があったから、そこからの派生だったんだ。
Aくん:そうか、にっくんはそのころから心理学に興味があったんだね。
にっくん:うん。もちろん、Aとか他の友達と話すのが楽しくてハマったっていうのはあるよ。
神田:2人とも当時そんなに夢中になってたんだ〜。
にっくん:Aがみんなを巻き込んでた感じではあったよね(笑)。コミュニケーションの一環として楽しんでたんだと思うよ。
Aくん:全然覚えてないな(笑)。
Aくん:ちょっと話がそれたけど、『無限論の教室』を読んだときに、何かこう、世界の構造みたいなものをいろいろ考えたり理解することって面白いな、自分の性にも合ってるんだろうなって、何となく感じたの。
神田:じゃあそれもあって、大学では物理学科に進んだの?
Aくん:そう。物理って世界の構造を科学的に分析していく学問だから、自分の興味と合っていたんだよね。なので、当時、学級文庫のある環境を与えてもらったことも、その後の道を選ぶことに繋がってると思う。
にっくん:じゃあ、今のAがあるのは、Eぐみの担任の先生のおかげだね。
Aくん:うん。それは間違いないよ。
あのころの自分に言ったとしても、きっと響かないけれど。
神田:Aくんもにっくんも、高校時代の学級文庫をきっかけに新しい世界に出会ったんだね。私もちゃんと読んでおけばよかったなぁ。
Aくん:もし、当時うちらと同じ本を読んでたとしても、かんちゃんはそんなに変わってなかったと思うよ。
にっくん:うん、変わらなかったと思う……。
神田:なにそれ(笑)! どういうことよ!
Aくん:(笑)いやいや、ああいうのはけっこう好き嫌いが分かれると思うから。それに、俺やにっくんが興味を持って取り組んできたのと同じ量のことを、かんちゃんは別の何かとしてやってきてると思うんだよね。
神田:そうなのかなぁ。
Aくん:うん。結局そういう「総量」って、みんな同じだと思う。それに、興味を持つにはタイミングも重要だし。俺も、学生時代は歴史とか政治って全然興味がなくてね。だからといって、もっと歴史の本を読めって高校時代の自分にアドバイスしたとしても、たぶん響かないんだけどね。
にっくん:そうだね。「ハイハイ、大人はみんなそう言いますよねー」って、受け流しちゃう気はする。 “自分ごと”だと思えないと、なかなか難しいよね。
神田:確かに。
Aくん:しかも勉強するとなれば、どんな分野であっても、ある程度のハードルを越えないと楽しいと思える段階に行けないから、気乗りしない本を読むだけでは面白さに気づけないだろうしね。
にっくん:そうだよねぇ。
Aくん:とはいえ、何気なく受けてた授業が、実はあとで役に立ってることもたくさんあると思うんだよね。それこそ、担任の先生の国語の授業は、今でも色々なことを考えるための基盤になってる気がするんだよ。
にっくん:そもそも先生自身が哲学に詳しかったから、それが反映された内容も多かったよね。
神田:なんだかやたら難しかった記憶はある(笑)。だけど当時高校生だった私たちに対して、そういう難しいものを当たり前に与えてくれたことも、今考えてみると有り難かったな。みんなヒイヒイ言いながら、よく必死について行ってたよね……。
にっくん:「ロゴスとパトスってなんだよ〜(泣)!!」なんて言ってね(笑)。
意識的に踏みはずす。
神田:そう思うと、私たちの高校はいい環境を与えてくれてたのかもしれないね。でも、自分が置かれた環境だけで将来が決まっちゃうって、辛くない?
Aくん:そうだね。確かに環境要因は大きいけど、だからこそ、色んなことを自分で意識的に踏みはずしてやってみて、視野を広げることが大事だとも思うんだよね。
にっくん:意識的に踏みはずす、か。
Aくん:うん。それを繰り返していかないと、本当にやりたいことは見えてこない気もするんだ。だから、極端な例で言えば、「将来の夢を考えろ」って小さい子にいきなり言っても難しいと思ってるの。最初からやりたいことが明確でずっとブレない人もいるかもしれないけど、普通は、色んなことをやってみて、学んで、視野が広がってきて、そうやって初めて考えられるようになる気がするな。
神田:確かに。でも大人ってすぐに「将来の夢は?」って子どもにきいちゃうよね。
Aくん:子どもの夢がちゃんとしていると、大人は安心するからね。俺は将来の夢とか書くのは好きじゃなかったな。
にっくん:あれはあんまり意味のない質問なのかもね。
Aくん:その質問に意味があるとすれば、その時点での好きなものを整理して、それを構成して書く力があるかどうかを確かめるためだよね。
神田:なるほど。
にっくん:ちなみに俺、幼稚園のころになりたかったものは、サラリーマン。
Aくん:渋いね(笑)。俺はお菓子屋さんだったな。
神田:私は編み物が上手な人。縫い物は得意だったから、次は違う分野を攻めようと思って(笑)。
にっくん:まさに「意識的に踏みはずす」をやろうとしてるね!
(後編へ続く)
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(後編へ続く)