学び直しの必要性
人はさまざまな記憶を、ずっと同じように持っているわけではない。「忘れる」というのは、嫌な思い出で頭がいっぱいにならないようにするためにも、とても大切な機能なのだと思う。
しかし、いつの間にか忘れてしまって困ることもある。私の場合それは、取材のために必要なこと、執筆のために必要なこと、そして推敲のために必要なことだ。
もちろん、かつて勉強したことを完全に忘れてしまっているわけではない。上から他のものがどんどんと降り積もって、見えなくなってしまうのだ。実践的なことも、心構え的なことも、繰り返し学んできたはずなのに、いざとなったときに出てこない。落ち着いて教科書を見返せば、「そうだった、そうだった」と思うのに。
それは、勉強したことが私の中に本当の意味で定着していないということでもある。字面では何度も読んでいても、単に分かった気になっているだけで、骨の髄まで浸透しているわけではない。
しかし、当時は表面的にしか理解できなかったものが、今になってやっと腹落ちすることもある。教科書に書いてあることは変わらないし、当時、その文章を読んだことも思えているのだけれど、今それを読むと、より実感を持って理解ができるのだ。
そう考えると、やはり学び直しはとても有効なのだと思う。一度学んだことでも、「かつての私」ではなく「今の私」が学ぶことで、得られるものは変わるからだ。目の前にあったのに、見えなかったものがたくさんあったに違いない。再発見のために、私はまた学び直す。