涙のラドゥ
インドの伝統菓子ラドゥ。ひよこ豆の粉に砂糖、ギーを加えてお団子のように丸めたもので、結婚式などの祝い事やヒンドゥー教のお祭りなどに欠かせないお菓子だそうだ。
(日本でも有名な映画「マダムインニューヨーク」の主人公シャシもラドゥ作りが得意でしたね。)
インドのジャルガオンにあるアルティさんのお姉さんの家に初めてお邪魔した時のこと。玄関で赤いお粉「ティカ」を額に塗ってもらい、ラドゥをパクっと食べさせてもらった。これは歓迎の意を表しているのだそう。
お料理上手なお姉さんたちが心を込めて作ってくれたラドゥは格別!
インドスウィーツは激甘で有名だけど、このラドゥは甘すぎず優しい素朴な味がしてとても美味しかった。
観光客扱いでは決してなくて、アルティさんの友人として迎えてくださったことが本当に嬉しかった。
この街に日本人が来ることが相当珍しいのか、滞在中に地元の新聞社が取材をしに来た。なぜインドに興味を持ったのか?インドの何が好きなのか?インド映画は好きか?など色んな質問が飛び交う。
私はインドが誇る大スター アーミル・カーンのファンで、彼の代表作はほとんど見ていると答えると、記者の方たちが「ほ~ぅ」というような顔で満足そうにうなずいていたのが印象的だった。
翌日、地元紙にカラー写真付きで掲載された私たち。日本の新聞にだってなかなか掲載される機会はないのに、インド、それもマハラシュトラ州の地元紙に載るなんて!私たちの名前や年齢も載っているとかいないとか。え?!年齢なんて答えてないけど(笑)見た目年齢なのかしら(笑)実年齢より下であることを祈るばかりだ。
ちなみに記事はマラティ語というマハラシュトラ州の言葉で書かれているので、アルティさんの夫でヒンディー語を話すアビシェイクさんは「何て書いてあるか分からない・・・」と言っていた。インドには、ヒンディー語と英語の公用語のほかに、州レベルの異なる言語が30、さらに方言は2000前後も存在するというから驚きだ。
ジャルガオンには2日間滞在し、インドの家庭料理を習ったり、ご近所さんたちと一緒に歌ったり踊ったり、マーケットに買い物に行ったり、ヒンドゥー教のお寺に参拝したりと、インドの普通の人たちの普通の暮らしをのぞくことができた。
そしてお別れの朝。
お姉さんたちがたくさんのラドゥを持って見送ってくれた。
「これから先の旅路も無事でありますように、、、」そんな想いを込めてまた食べさせてくれた。
日本から一緒に旅してきたアルティさんのお母さんともここでお別れ。お母さんはヒンディー語も英語も日本語も話さない。マハラシュトラ州の言語マラティ語だけ。でも、言葉が通じなくても、なぜだか言っていることが分かる瞬間があった。海外を旅していると、そういう不思議な現象が度々起こる。
「分かり合いたい」という気持ちがそうさせるのか、ただの脳内での都合の良い解釈なのかは分からないけれど。
アルティさんのお母さんとたくさん話をして笑い合ったこと、そして彼女のことが大好きのは事実だ。
出発のとき、お母さんが泣いてしまった。日本で暮らすアルティさんとはまたしばらく会えなくなってしまうし、道中一緒に過ごした私たちとお別れするのも寂しいといって。
そんなお母さんの涙にもらい泣きをしてしまう。「ありがとう、元気でね、また必ず会いましょう」と泣きながらお互いの言葉で伝えあった。
甘いはずのラドゥは、涙でしょっぱくなってしまった。
(※2018年のインド旅日記です)
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