慢性心不全の新薬 Ivabradine イバブラジン
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以前、2020年に日本で承認されたばかりの慢性心不全治療薬の新しい作用機序を持つ ARNI の一つであるENTRESTO® エンレスト® について話しました。
今回は、2019年に承認されたHyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated (HCN)チャネル阻害薬であるココラン®についてです。
一般名
Ivabradine Hydrochloride
イバブラジン塩酸塩
商品名
LANCORA® (Servier)
ココラン®(小野薬品工業株式会社)
作用機序
■Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated (HCN)チャネル阻害薬
治療対象
日本:洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全
ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
カナダ:New York Heart Association (NYHA) class II or III の成人患者における、左心室駆出率(LVEF)の低下(35%以下)を伴い、洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が77回/分以上の安定した慢性心不全。
-NYHA classⅡ or Ⅲで、ACEI or ARB, βブロッカー、MRA(ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト)の標準的な治療を受けている
+前年に心不全のために少なくとも1度は入院した。
+安静時心拍数は、少なくとも3回のECGを使用、または継続的なモニタリングで平均77回/分以上である。
用量
日本:通常、成人にはイバブラジンとして、1回2.5mgを1日2回食後経口投与から開始する。開始後は忍容性をみながら、目標とする安静時心拍数が維持できるように、必要に応じ、2週間以上の間隔で段階的に用量を増減する。1回投与量は2.5、5又は7.5mgのいずれかとし、いずれの投与量においても、1日2回食後経口投与とする。なお、患者の状態により適宜減量する。
カナダ:カナダでは5mg, 7.5mgの2種類のみのようです。
HCNチャネルって何?
また、長い医療用語がでてきたと思いましたが(笑)、めげずに考えてみました。Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channels、この頭文字をとってHCNですが、やはりややこしいですね。
①どこにある?
HCNファミリーのチャネルは、中枢神経系や脳、心臓に発現しているようです。HCNチャネルは、てんかんを含む神経疾患や、網膜生理や慢性疼痛にも関わることが知られています。が、今回重要になるのは心拍数を下げる作用を持つ薬のターゲットとして注目されたことです。
②HCNの作用は?
HCNファミリーは、現在までにHCN1,2,3,4の遺伝子によってコードされています。この中で、Sinus rhythm 洞調律の調整を担っているのはHCN4です。心臓内で最も多くHCN4が発現しているのがSA node 洞房結節ですが、AV node 房室結節やHis-Purkinje fibers ヒス-プルキンエ束にも発現しています。
③6回膜貫通型のイオンチャネル
各サブユニットは、6回膜貫通型のイオンチャネルで、4つ目が電圧センサーとして重要な役割を果たしています。C末端領域のCyclic nucleotide-binding domain(CNBD)がチャネルのコアと繋がっています。cAMPが直接HCNチャネルのC末端に結合し、Cyclic-nucleotide 環状ヌクレオチドが結合することで、HCNチャネルの閾値電位が低下し、活性化される。Ivabradineは、このペースメーカー電流(If)をHCNチャネルの内側から抑制して、拡張期の脱分極相における活動電位の立ち上がりを遅らせることで、心拍数が減少し、心臓の負担が軽減するという仕組みだそう。
参考:
1.小野薬品工業株式会社 ココラン錠
2.Ivabradine in Canada
3.Ivabrandine formula
4.日経メディカル ココラン
5.HCN channel について(Circulation, 2013)
*この記事は、私が日々勉強する中で得ている知識を元に書いています。事実に基づいた作成を心がけているつもりですが、一部で間違いがあったりする可能性もあります。ご了承下さい。