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最年少・わずか5年で上場したアパレルブランド「yutori」の合理と非合理のバランスをとったブランド戦略をトレース

最年少・わずか5年で上場したアパレルブランドとして話題のyutori

優れた戦略は
一見非合理だけど、戦略全体で合理性がある」
と言われます。

私が戦略の教科書にしている「バカな」と「なるほど」

良い戦略の条件
・競合は、「バカな!?」という反応をする
・市場が後から、「なるほど!」という反応をする

Z世代向けのアパレルブランドで上場!?
しかも70ブランド超えるラインナップを目指す?

最初はバカな?
と感じるけど、
全体の仕組みをみると、なるほど!
「バカなる」を体現しているブランドがyutoriだと感じています。

2024年でもっとも驚きと学びをもらえたブランドかもしれません。

簡単に戦略要素を要約しておきます。

1. 非合理的な要素

  • 各ブランドディレクターにはターゲット層と近くて、感覚的に「いいもの」をつくれる、センスの良い人を採用

  • 若い社内メンバーが「こういうものをつくりたい」という初期衝動をもとに商品開発

2. 合理的な要素

  • クリエイティブディレクターは定期的に若い人に入れ替え(引き継ぎ)→ワカモノの時代感覚とズレないように

  • SNSではユーザーの保存数、ポップアップショップでは、オンライン上での待機数など定量的KPI設計

  • Yリーグと言われる明確な成長・撤退基準の明確化

  1. 感覚・直感的に「良い」を追求

  2. 後から論理・合理的に考えて組織として健全に運営する

yutoriは、この2つを絶妙なバランスで実現させている。

分析してみた詳細をまとめていきます。

yutoriの非合理・合理を組み合わせた戦略システムマップ

売上推移

下記は創業からの売上推移です。


  • 2020年3月期: 約1.41億円

  • 2021年3月期: 約5.68億円 古着から自社ブランドへ転換→勝ち筋の発見

  • #古着女子と繋がりたいというハッシュタグを発明して、SNSを起点としてムーブメントを起こす

  • 2022年3月期: 約16.32億円 複数ブランド展開による売上拡大

  • 2023年3月期: 約24.70億円 ZOZOの傘下・組織の型をつくり、成長の基盤を整える

  • 2024年3月期: 約43.20億円 上場からのさらに成長投資

さらに、上場後はM&Aを推進して、70ブランド・売上100億を目指して経営をされています。

こじはるさんのheart relationを16億9200万円で買収したのは、大きな話題になりましたね。

yutoriのブランドのビジョン・ミッション


ビジョン
若者帝国をつくる

ミッション
「TURN STRANGER TO STRONGER (ハグレモノをツワモノに)」
ファッションブランドを纏うことで、 未知の才能をもつ世界中のハグレモノが、 そのズレを強さに反転させられるように

※片石社長のインタビューより抜粋

インタビュー動画やSNS発信を聞いたり見たりするとわかりますが、急成長する中でも、片石社長にブレないビジョン・ミッションがあるので、戦略に一貫性が生まれていることがわかります。

片石社長の言葉からは、なぜワカモノ向けのファッションなのか?がビシビシと伝わってきます。

若者帝国を目指すためのカルチャー

yutoriは組織内部の仕組みが素晴らしい。

各ブランドディレクターにはターゲット層と近くて、感覚的に「いいもの」をつくれる、センスの良い人材を配置。

平均年齢は25歳とのこと。

若者の衝動を商品開発に活かす

片石社長のインタビューでは、若い社内メンバーが「こういうものをつくりたいという初期衝動」をもとに商品開発ができるようにしているとのこと。

他企業がZ世代にインタビューしようでは出てこないインサイトを掴めるのは、毎日SNSをみて、ユーザーの反応をみる、自分たちが消費者として楽しみ続ける人たちを集めているからなのでしょう…素晴らしい。

yutoriの採用サイトや、コーポレートYouTubeなどを見ると、ワカモノが活躍できる組織の土壌づくりにこだわり抜いていることがわかります。

時代感を常にキャッチ・フィットできる仕組みづくりは、下記のブランドディレクターを世代交代する仕組みにも現れています。

そして、一度作ったブランドは、クリエイティブディレクターを若い人へと世代交代させて、常にコミュニティの鮮度を保つようにします。

【快進撃】創業5年でIPO。Z世代向けアパレルがすごい

YouTubeで公開されている全社会議を見ていても、え、ワカモノマネジメントなのにスポ根?といった「バカなる」要素に溢れています。

この採用・カルチャー醸成の仕組みが、他のアパレルブランドではマネできない根底の競争優位性になっていると感じています。

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