藤原不比等「強姦罪は斬首刑!殺人と同じ量刑に」安倍晋三「強姦罪は廃止!強制性交等罪は強盗と同じ量刑に」
よく「野党は何でも反対」と言われていますが、実際には国会で成立する法律の殆どは全会一致で可決しています。
その中でも、故・安倍晋三首相の時代に自民党から共産党までの全会一致で成立し、しかも『朝日新聞』からフェミニストまで多くの左翼が大絶賛した法律がありました。
それは何か。当時の『しんぶん赤旗』から引用してみましょう。
おお、なんか見出しだけ見ると素晴らしい法改正ですね。
なんと、あの安倍さんが、性犯罪厳罰化をしていたというのです。そりゃ、政治家の皆様も全員賛成しますわな。
・・・って、アホかいな!
これを称賛する人、みんな底なしのアホやと思いますよ。
ちょっとツッコんでみましょう。先ずは、『赤旗』にも書いてあるこの部分。
これはどういうことか。
言うまでも無いことですが、強姦とは身体男性が身体女性に無理やり性行為を行う最も悪質な性暴力です。
しかし、実はそれに対して「被害者が女性の場合だけ罰せられるのはオカシイ!男性差別だぁぁぁぁぁ!」と叫ぶアホがいたのです。
なお、女性から男性への逆レイプも従来から強制猥褻罪で罰せられていました。無論、強制猥褻罪の厳罰化も重要な課題ですが、それは強姦罪とは別の問題です。
強姦罪は被害者女性を妊娠させようとする未必の故意があります。もしも妊娠した場合、多くの場合は堕胎されるでしょうし、そうでなくても父親が犯罪者であること自体が一種の虐待ですから、強姦犯には堕胎や児童虐待の未必の故意もある訳で、他の性暴力よりも著しく悪質性が高いと言えます。
それを他の性暴力と同等に扱うことは、望まない妊娠をさせること自体を罰しないと言っているも同様で、事実現行の刑法には望まない妊娠をさせたからといってそれを理由に罰する規定は一切存在しません。
が、実は安倍政権の下で「強姦罪は男性差別だ!」という主張は堂々と国会決議になってしまったのです。
この附帯決議の問題点は性的マイノリティの差別とマジョリティである男性への差別を同列に扱っていることです。
また、性的マイノリティへの性暴力はヘイトクライムの類型で扱われるべきであり、本当に性暴力における性的マイノリティ差別を廃止したいのであれば、ヘイトクライムに対する法整備を行うべきでしょう。
女性に対する性犯罪は、本来ならば「望まない妊娠をしない権利」も保護法益とするべきであるのに、安倍政権の法改正ではその観点が一切欠如していました。
理由は、恐らくは堕胎で稼ぎたい医師会の意向でしょう。望まない妊娠が増えた方が中絶をする女性が増えて医療利権複合体の利益になるからです。
そうであれば、プロチョイス(生命軽視派)である左翼がこの法改正を絶賛した理由も説明が付くのです。
しかし、それにも増して重要なことはこの法改正、実際には全然厳罰化になっていないということです。
強制性交等罪の条文を引用してみましょう。
さて、これをマスコミは「厳罰化」と言っている訳ですが、一体どの程度の厳罰化なのか。どの罪と同じぐらい厳罰に処されているのでしょうか?
実は、これと同じ量刑の罪は一つしかありません。それがこれです。
レイプ犯の量刑が強盗と同じぐらい、のどこが「厳罰化」なのでしょうか?
無論、これまでの強姦罪の量刑が軽すぎた、という事情もあります。
しかしながら、強制性交等罪の量刑は通貨偽造罪よりも軽いということは重要な問題であると考えます。
そして、これまでの強姦罪の量刑が軽すぎたと言っても、古代においては強姦罪の量刑はもっと重かったのです。
『養老律令』におおける量刑を見てみましょう。
律令の文章はしばしば主語が省略されるので、もう少しかみ砕いて要約するとこうなります。
これでもややわかりにくいところがあると思うので、いくつか用語を解説します。
まず、良人とは良民の別表記で簡単に言うと貴族から庶民に至る身分の人のことを指します。
念の為に言うと、これを「高貴な女性」と解釈しないでください。雑色人はむしろ被差別民です。
そしてここで言う姦淫はいわゆる和姦のことを指し、この条文の趣旨は同意があっても懲役二年半に処するということです。
この条文の内容が良民女性だけを対象としているのは、良民女性を優遇しているというよりも、むしろ賎民女性の貞操を軽く扱っていると解釈するのが妥当でしょう。
次に家人と奴ですが、家人はその家に代々仕える隷属民で奴は売買され得る男性奴隷のことです。彼らが主人である女性に姦淫をした場合、これまた同意があっても絞首刑です。
なお、古代日本では戸籍の内容から女性にも奴隷主がいたことが判っています。奴隷制廃止は平安時代に行われました。
ここまでは同意がある場合の性犯罪ですので、同意をした女性も罪に問われる等、現代の法体系にはそぐわない面もあります。
重要なのは、最後の強姦罪の規定で、まず斬首刑は絞首刑よりも重い刑罰です。
そこで、他にどういう罪に斬首刑が適用されるのかを見ると、古代律令国家が強姦罪をどれぐらい重く見ていたかがわかります。そこで斬首刑になっている例を挙げてみると、
と言ったものがあります。なお「謀反」「謀叛」「謀殺」は二人以上で共謀する犯罪であり未遂を含む概念で、それが単独でも成立する「故殺」等とは区別されます。
これを見ると判るように、律令国家においては強姦罪と強盗罪であれば強姦罪の方が重い量刑でした。
これは『養老律令』を制定した藤原不比等の賢明な判断でしょう。
強盗致死と強姦の量刑を同じにしたことは、安倍政権やその法案を全会一致で通した政治屋の皆様に藤原不比等の爪の垢を煎じて飲ませたくなる規定です。
よく左翼の皆さんは「家父長制ガー!」と言って古代の日本を否定しますが(そもそも律令国家は家父長制では無かったというのが定説なのですが)、現代日本の安倍政権や左翼よりも遥かに性暴力に厳しいのが律令国家でした。或いは、今の日本が古代以上に性暴力に甘すぎるだけなのかもしれませんが。
強姦と強盗の量刑を同じにすることが「厳罰化」というのは、正気が疑われる訳ですが、現代人は少しは古代の知恵に学ぶべきでしょう。
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