実は世論と乖離していた「選択的夫婦別姓」論者の主張
令和3年3月26日、「戸籍婚における選択的夫婦別氏」の実現を推進しているロビー活動団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」(以下、夫婦別姓アクション)の井田奈穂事務局長がTwitter上で「双方改姓せず戸籍上の結婚を望んでいる」と改めて明言した。
その上で、「同一戸籍同氏」の原則維持と夫婦別氏による法律婚とを両立させる「婚姻制度選択制」については「ニーズ違い」と評価、あくまでも「戸籍婚における選択的夫婦別氏」を求めるとの姿勢を明確にした。
夫婦別姓アクションの幹部が法律婚における夫婦別氏を容認する内容の対案に反対したことにより、彼らの言う「選択的夫婦別姓」には「同一戸籍同氏の原則の否定」が含まれていることが明らかとなり、「名字は家族の名称」と考えている8割以上の国民(平成29年度内閣府世論調査)の世論とは乖離していることが明白となった。
「婚姻制度選択制」は「ニーズ違い」と主張する井田事務局長
3月26日、筆者はTwitter上でいわゆる「選択的夫婦別姓」を推進している代表的な市民団体である、夫婦別姓アクションの井田奈穂事務局長に対して「『法律婚で夫婦双方が改氏しなくてもいい選択肢を認めろ!』ということでしたら『戸籍婚における選択的夫婦別氏』ではなく『婚姻制度選択制』でもいいはずです」と述べ、婚姻制度選択制について説明する画像も載せたうえで見解を聞いた。
すると同日中に井田氏からTwitter上で私のツイートを引用する形で回答が来た。その内容は「何もかもズレておられます」「選択的夫婦別姓希望者は、双方改姓せず【戸籍上の結婚を望んでいる】だけです」とした上で、婚姻制度選択制については「別の制度をお望みでしたら、ニーズ違いです」と一蹴するものであった。
つまり、同一戸籍同氏の原則と両立する形での対案は、夫婦別氏による法律婚を認める内容であっても「ニーズ違い」である、と言うことである。
井田氏の主張が「同一戸籍同氏の原則」そのものの否定であることが明白となった。
井田氏が否定した婚姻制度選択制とは、婚姻制度に様々な選択肢を用意するもの。現在の法律婚は原則として、夫婦が婚姻と同時にこれまでの戸籍から離脱して新しい戸籍を作る「創籍型婚姻」しか認められておらず、戦前の家制度下で行われていた夫婦の一方が相手の戸籍に入る「入籍型婚姻」や夫婦が別々の戸籍のまま婚姻をする「別籍型婚姻」は認められていない。
ただ、一度結婚して離婚し自分一人だけの戸籍を形成している人間の戸籍に入る形での「入籍型婚姻」は、例外的に認められている。また、外国人は日本の戸籍に入ることはできないため、国際結婚については(戸籍制度は日本と中国にしかないため、厳密には異なるが)事実上の「別籍型婚姻」が行われている。
今の日本では主に保守的な国民の間で「婚姻=入籍」という用例が見られるが、これは法律上誤りと言うことになっており、『朝日新聞』を始めとする一部メディアは「入籍」の用語を用いないことを決めている。婚姻制度選択制では、伝統的な「家制度」を重視する国民には「入籍型婚姻」の選択肢が与えられ、逆に夫婦別氏を求める国民には「別籍型婚姻」の選択肢が与えられることとなり、「同一戸籍同氏」の原則を維持しながら多様な婚姻のあり方を認めることができる。
一方、井田氏が要求する「戸籍婚における選択的夫婦別氏」とは、「創籍型婚姻」において夫と妻とが別々の氏を名乗ることを可能にする、というものであり「同一戸籍同氏」の原則とは相容れない。井田氏はかねてから現行の戸籍制度そのものに対して否定的な発言をしていた。
「国民の7割が夫婦別姓に賛成」というレトリック
夫婦別姓アクションは自分たちが行ったインターネット世論調査の結果として「国民の7割が夫婦別姓に賛成」であると主張している。しかし、これは夫婦別姓アクションが実現を求める「戸籍婚における選択的夫婦別氏」への賛同を意味するものでは、無い。
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