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国家権力による「虐待」こそが最大の問題

 岸田政権下で昨年『民法』が改正され、親権者による子供への「懲戒権」が削除されました。保護者が自分の子供に懲戒をすることを禁ずる、というのは怖ろしいことです。
 それは他の法律とのバランスを見ると明白です。
 「学校教育法」では学校による体罰は禁止していますが、罰則規定はありません。保護者が体罰をすると「児童虐待」扱いされて子供を児童相談所に隔離されるのとは雲泥の差です。
 さらに「学校教育法」では保護者には認められていない「懲戒権」が学校に認められており、判例ではその「懲戒」の中に「有形力の行使」も含まれるとしています。
 つまり、学校が「懲戒」として生徒相手に実力行使に及んでも体罰にならければ合法である、仮に体罰であると認定されても罰則はない、と言うことなのです。
 私自身の経験から言うと、学校は生徒が生活指導室から出ようとするのを、体育教師を含む男性教師数人がかりで力尽くで押さえつけるようなこともしています。恐らく判例でも認められた「有形力の行使」という解釈なのでしょう。
 無論、学校内での行為について学校が懲戒を行うのは理に適っているという意見もあるでしょうが、実際には学校は校則で校外の行為に就いても「懲戒」の対象としています。保護者が出来ない「懲戒」を学校が行う権利がある、ということに合理的な理由があるとは思えません。
 むしろ、校外での行為は学校ではなく親権者が責任を持つべきであり、懲戒権も学校ではなく親権者に属する方が合理的です。
 岸田政権が保護者による懲戒を禁じて学校権力による幅広い懲戒を認めている背景には、中間団体である家庭を解体して個人を国家権力が直接支配しよう、という思想が有るように考えられます。
 その証拠に、岸田政権は本人や家族の同意が無くても市長の判断で精神障碍者を「強制入院」させることが出来るような法改正まで推進しています。共通しているのは、子供や障碍者と言った弱者を「権力の管理下」に置こう、ということです。
 無論、家庭の問題に国家権力が干渉することが必要な場面もあります。
 例えば児童虐待において国家が子供を保護することが必要なことも、確かにあるでしょう。但し、今の児童相談所による「保護」の在り方には問題があります。
 そもそも、現在の「児童福祉法」では「児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握する」つまり「調査目的」での「一時保護」が可能となっています。しかも、一時保護中の学校への通学を制限して子供を監禁する事すら、児童相談所の権能として認められています。
 「調査目的」で保護者との接見も学校への通学も禁止されると、却って子供への虐待となり得る場合があります。
 最低限、「一時保護中は保護者への接見と学校への通学を全面的に認めること」を法律に明記するべきです。虐待親による連れ戻しを危惧しているのであれば「職員立ち合いの下での接見を認める」という風にすれば良いだけのことです。
 こうした法改正は岸田政権以前から行われていたものですが、岸田首相は安倍政権下でも閣僚や政務調査会長と言った政策決定に関わる要職を務めており、その上での現政権の政策ですから、岸田首相は一貫して「国家権力による子供管理」を強化する方針を打ち出していることになります。
 政府は欧米の例を持ち出すこともあるようですが、聴くところによると欧米では幼い頃から子供は親と別室で寝かされるようです。幼児を1人で寝かすとは、私からするとそれこそ虐待ですが、その様な国をモデルにしようとしているのが岸田政権なのです。
 最近、在外邦人の方のブログを読んで知ったのですが、欧米では日本人客の多いホテルを除くとツインベッドというものは存在しないそうです。日本だと友達や恋人と旅行に行く際に「同じ部屋だが別のベッド」で寝るのはよくあることですが、欧米人は部屋まで別にする、それが欧米の文化だということです。
 逆に在日外国人の友人から「異姓の親と一緒にお風呂に入る日本の方がオカシイ」という指摘を受けたこともあり、どちらが正しいかは議論の分かれるところですが、とりあえず文化の全く違う国の制度を日本に接ぎ木しても上手くいはずがありません。
 そもそも、海外を参考にするならば、まずは文部科学省を廃止しないといけないことになります(笑)。欧米には文部科学省に該当する組織は無く、イギリスには十年ぐらい前に教育省が出来ましたが、日本の文部科学省とは権限が大きく異なります。
 我が国では戦前に「特別権力関係理論」が採用されており、学校や児童相談所が子供に対して広範な裁量を有しているのも、特別権力関係理論の名残でしょう。
 しかしながら、今の時代には特別権力関係理論は概ね否定されています。家という中間団体を復興させつつ、権力は子どもを守ることだけに徹する、そういう法体系の構築が求められます。


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HINO
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