いわゆる「選択的夫婦別姓」はそもそも“前提条件”が議論されていない
前提条件がそろっていない段階で議論をすると、多くの場合単なるイデオロギー論争になり、「ためにする批判」に堕してしまいます。
アメリカでは、日本で言う「内密出産」や「こうのとりのゆりかご」に該当する、赤ちゃんのいのちを守るための選択肢を保証する『赤ちゃん避難所法』が、アラスカ州とネブラスカ州の二州を除くすべての州で制定されています。
対して、日本でこのような動きをしているのは慈恵病院や一般社団法人「いのちを守る親の会」に限られ、政党レベルでは国民民主党と立憲民主党の一部が取り組んでいるだけです。
アメリカでは、中絶以外の赤ちゃんのいのちを守る選択肢の保証が「自明のこと」とされた上でプロチョイス(選択重視)とプロライフ(生命尊重)の議論が行われている訳ですが、日本のプロチョイスは上述の運動を主にプロライフが取り組んでいることもあり、自分たちが同様の運動をすることには怖ろしく消極的です。
そんな状態でプロチョイスのいう「中絶自由化」を認めようものならば「半強制的堕胎」が横行することは目に見えている訳で、一方、プロライフの多くは自民党支持者ですが、自民党政権が『赤ちゃん避難所法』に該当する法律を制定していない今、プロライフの主張も「単なるきれいごと」と思われるのがオチです。
つまり、プロライフもプロチョイスも、どちらも議論の俎上に上る以前の段階であるにもかかわらず、(主にプロチョイス側によって)非建設的な議論が行われている訳です。
選択的夫婦別氏(いわゆる選択的夫婦別姓)についてもそうです。
選択的夫婦別姓推進派の主張は、主に次の二つです。
①夫婦同氏によって改氏に伴う不都合が存在する
②女性の96%以上が改氏されているのは女性差別である
例えば、夫婦別姓推進派の井田奈穂氏は次のように述べています。
私自身は初婚・再婚で2回改姓しています。井田というのは、実は元夫の姓です。子育てや仕事に影響がないよう、離婚後も婚氏続称(結婚時の姓を継続して名乗る手続き)して、「井田」で20年以上社会生活を続けてきました。戸籍上では再婚して別の姓になっています。
再婚にあたり事実婚ではなく法律婚を選択したのは、いまの夫が腫瘍摘出手術を受けることになったのがきっかけでした。病院から「“奥様”でない方には手術合意書に署名していただけない。ご家族の方を呼んでください」と言われたことから、もし彼に何かあったときのためにも、やはり法律婚をしておくべきだと判断しました。
これで私が疑問に思ったのが、「そんなに改氏が面倒であるならば、どうして夫に改氏してもらわなかったの?」です。
だって、お二人とも事実婚カップルであって、あくまでも戸籍婚にメリットは感じていない訳ですよね?
ただ、戸籍を一緒にしないと夫が入院した時に大変と言う、専ら夫の事情で戸籍婚をするのであれば、夫側に改氏してもらえばよいのです。
無論、法律上は男女どちらの氏にしても問題無いのですから。
どうして夫は改氏しなかったのでしょうか?
仮に、夫側が「男性は改氏しなくても良い!」という男尊女卑な価値観の持ち主で、そういう男尊女卑な男と自分から結婚して置きながら「96%の女性が改氏を強要されている!差別だ!」と言っているのであれば、
いい加減、差別のマッチポンプは止めろ!!
と、言いたくなります。
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