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イランで保守穏健派を失格にすると反保守大統領誕生!保守系野党が必要な理由を見事証明

 大統領の殉職で急遽行われたイラン大統領選挙では、19年ぶりに改革派の大統領が誕生するということで話題になっている。
 まだエブラーヒーム・ライシ前大統領が殉職する前の、イランとイスラエルの間で武力衝突が起きたばかりのころ、私が知人に
「こんなことが起きると、ライシ大統領も次の選挙が大変やな」
というと、その知人が
「え?イランに選挙があったの?」
と驚いていたことを思い出す。
 欧米はイランが民主的ではないと非難するが、イランでは普通選挙が実現しており、イスラム法も直接適用するのではなく、議会で法律にしてから適用される。
 もちろん、議会もイスラム法に反する法律を制定することはできないため、民意よりもイスラム法が優先される側面はある。
 しかし例えば「世俗主義」を掲げているはずのインドでは、大菩提寺(ブッダガヤ)管理委員会の委員長を地元の行政長官とする法律があるものの、その法律には但し書きがあり、行政長官が非ヒンドゥー教徒であれば別のヒンドゥー教徒を委員長にする、という「民意よりもヒンドゥー教」な規定がある。ブッダガヤは仏教の聖地であるにもかかわらず、そのような規定があるのである。
 このように、「民主的」と評価される諸外国と比べても、イランが特段に非民主的というわけではない。
 だいたい欧米と仲の良いサウジアラビアは、イスラム法を直接適用している上に議会は任命制であって、普通選挙で候補を選ぶイランよりも明らかに非民主的である。イランが非民主的だというのは欧米によるイラン攻撃のための口実に過ぎない。
 そんなイランであるが、あくまでも民意よりもイスラム法が上位に来るため、イスラム共和制と名付ける体制に反対する人間が何かの間違いで当選しては困る。そこで、候補者については「審査制度」を設けている。
 イラン政府はその審査制度と普通選挙の建前の両立を図るため、これまで様々な工夫をしてきた。
 イラン政府としては当然、保守派に当選してほしいわけであるが、保守派だけしか審査を通らなくすると普通選挙の意味がない。かと言って、イスラム共和制に反対する革新派が当選しても困る。
 そこで、イスラム共和制の枠内での改革を訴える「改革派」であれば出馬を許可しよう、ということにした。
 そして、いざ選挙をすると最近(ここ19年間)は改革派よりも保守派の方が人気のあることが判明した。そこまでは日本も似たようなものである。
 が、ここで保守派の中でも強硬派が率いるイラン政府は何を血迷ったのか、ライシ大統領が逝去してからこんなことを考えてしまった。
「なるほど、これまで選挙ではほとんど保守派が勝っていたが、保守強硬派ではなく保守穏健派が勝ってしまうことが少なくないな。ならば、次の大統領選挙の審査では保守穏健派の候補者を全て失格にして『保守強硬派VS改革派』の図式にすると、保守派の人間はみんな消去法で保守強硬派に入れて『民主的』に保守強硬派の政権が維持できるぞ!」
 つまり、日本でいうと「保守系野党を潰して自民党政権を維持しよう!」という、今の政府とマスコミが実践している(と、私が主張している)政策を、イラン政府もしたのである。
 が、結果は冒頭の通りだ。
 保守派の野党が存在しなくなった結果、政府に不満を抱く人たちは「消去法で」改革派に投票することになったのである。
 イランの保守強硬派が目障りに思っていた保守穏健派は、実際にはイランの保守体制を維持する役割を果たしていたのである。そのことに気づかなかったイランの保守強硬派はあまりにも愚かである。
 このことは保守系野党の必要性を雄弁に物語る。
 日本でもマスコミとネトウヨ、それに日本会議は保守系野党にあまりにも冷たい。
 産経新聞やネトウヨは保守系野党の人間に対して左翼以上に敵愾心を燃やしているし、多くのマスコミはそもそも批判すらせず、保守系野党の存在を無視する。彼らはまるで自民党と共産党による二大政党制を望んでいるかのようである。
 しかし、超保守派の私自身、今の自民党を見ると「自民党か、共産党か」の二者択一であれば共産党に投票する気でいるし、このような国民は今後増えていくであろう。
 そんな中で、このまま保守系野党を潰していくと、何かの拍子に共産党政権が誕生しかねない。そのような事態を防ぐためにこそ、保守系野党が必要とされているのに、そのことを理解できない自民党は党利党略しか考えていない国家の癌なのである。


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HINO
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