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「株式譲渡益」への課税強化は必要である

 よく「職に貴賤は無い」という方がいるが、「人に貴賤は無い」けれども「職に貴賤はある」のである。
 「働く」というのは「傍(はた)を楽にすること」であって、その意味で市場原理に則り正当な報酬を受け取ることは、何ら問題はない。今の日本では格差が広がっていると言うが、よく働いた人間にその分の報酬が与えられることは、物事の必然である。
 しかしながら、今の時代には「職に貴賤はない」という言葉ばかり広まったせいで、その大原則が失われているように見える。

株の売買だけで「上場企業役員」以上の収入が・・・

 『週刊東洋経済』に「所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実」という記事があり、そこに興味深いデータがあった。
 なんと、年間所得50億円以上の超大金持ちの収入源の9割以上は「株式譲渡益」であるというのである。
 ちなみに、同じく『週刊東洋経済』の「「年収1億円超」の上場企業役員、上位500人リスト」によると、我が国の上場企業役員でもっとも高額の報酬を得ているのは、ソフトバンクグループ副会長のロナルド・フィッシャー氏で32億6600万円である。
 日本人に限定すると新日本建設会長の金綱一男氏が23億4300万円であり、要するに最高額の上場企業の役員報酬の倍以上の利益を株の売買だけで出している人間が存在する、ということである。
 本来、資本主義社会における株主というのは、会社のオーナーである。会社が健全な経営をしているのか、を監視する。株主総会において発言権と議決権も有しているため、会社の経営には「有限責任」ではあるものの一定の責任がある。
 会社からすると「株主」というのは自社に資本金を提供してくださる「恩人」である。が、件の「超大金持ち」の方は株を買ってもすぐに売る。会社の経営に関与する余地は少ないし、多くの場合はその気もないだろう。
 無論、市場経済を導入している以上、株式譲渡益で利益を上げる人間は必然的に存在する。だが、問題は株式譲渡益に対する税制上の「優遇措置」が取られているという事実である。

「最高税率20%」という破格の❝超減税措置❞

 菅政権、野田政権、安倍政権と、我が国の政府は「増税路線」を歩んでいる。庶民には消費税増税を行い、相続税も増税され、さらに所得税も増税された。
 そして、カルロス・ゴーン氏が脱税で逮捕されたことを始め、政府は「脱税」にはとても厳しい。が、「合法的」に❝節税❞が出来ている人間が存在するのだ。
 ご存知の通り所得税の最高税率は45%であるが、年収50億円以上の超大金持ちの主な収入源である株式譲渡益への最高税率は20%で「分離課税」という名の「大減税」が行われているのである。
 「金は天下の回り物」というが、「好景気」とは社会に金が流通している状態である。超大金持ちが株の売買に留まっていると、景気効果は限定的であり、その上、政府が破格の減税措置をしているのであれば、国家の財政にも悪影響を与えることになる。
 このようなことには何の正当性もないはずである。

職の貴賤の基準は「世のため、人のため」になるか

 政府が特定の職業を優遇するのは良いが、それには明確な基準がなければならない。それは「職の貴賤」である。
 職の貴賤というのは、即ち「その仕事は世のため、人のためになるか」という一点である。
 今の政府はそのような観点からの政策を行っていない。
 気候変動に食糧危機の原因である家畜産業を守るために、自衛隊に動物の殺処分をさせることもあった。
 風俗産業や原発産業も、事実上政府が保護している。それを非難すると「職業差別をするな!」という反論が来る。
 だが、政府としては「公益」というものを考えないといけないのである。「世のため、人のため」にならない職業を優遇するわけには、いかないのだ。
 株式譲渡益への課税強化は、「傍を楽にする」という正しい職業観を取り戻すためにも必要である。

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