真に性犯罪厳罰化を実現するための『刑法』改正私案
岸田政権の下で法務省の法制審議会が性犯罪に関する刑法改正を行うと言うのでその資料を見ましたが、結局、量刑自体は安倍政権が定めた「5年以上の有期拘禁刑」のままであり、期待された性犯罪厳罰化には全く踏み込みませんでした。
また、不同意性交罪の創設も見送られましたし、安倍政権による性犯罪ジェンダーフリー化を踏襲しているためか、身体男性による身体女性へのヘイトクライムにして望まない妊娠をさせる未必の故意のある強姦を加重処罰する事はなく、無論、望まない妊娠をさせたことを罰する規定もありません。
もっとも、文句を言っているだけで対案を出さないのは私の性に合わないので、これについて私なりの試案を書かせていただきます。
岸田政権の法制審議会案
私は法制審議会の主張を全否定する訳ではなく、強制猥褻罪や強制性交等罪の成立要件を緩和しようとしているのは評価できます。例えば、強制猥褻罪の要件は次のような感じで、強制性交等罪もそれに準じます。
ただ、あまりにも例を雑多に挙げ過ぎて、これでは不同意性交罪を設置した方が話は早いはずです。
また、強制性交等罪では「性交等」の中に物の挿入も含めるという事ですが、これだと余計に性暴力と他の暴力との区別が曖昧になってしまいます。というよりも、むしろそれこそが目的と言っても良いでしょう。
安倍政権がどうして性犯罪について『刑法』を改正したのか、と言うと、それは安倍政権が女性の権利を考えていたからでは当然なく、むしろ強姦罪廃止により女性が被害者の場合と男性が被害者の場合との量刑を同じにすることにより、仮にレイプ魔が女性を妊娠させてその結果その女性が中絶をすることになったとしても、レイプ魔はそのことによって加重処罰をされることはない、という事にすることで、女性の貞操と男性の貞操を同格に扱うようにし、延いては女性の貞操が軽視されることによって望まない妊娠を増やして堕胎で稼ぎたい医療利権複合体に利益を与え、生命軽視の社会を作りたいという深慮遠謀が背景にあったと推察されます。
無論、普段「女性の権利ガー!」と言っている左翼が「強姦罪廃止」を内容とする安倍政権の『刑法』改悪に賛成した最大の理由も(『刑法』改悪は全会一致で成立しています)、それが女性の貞操と男性の貞操とを同等に扱っていることが大きいでしょう。それは「性の解放」を訴える左翼にとってはまさに歓迎すべき事態ですが、この「性の解放」論も実際には望まない妊娠を増やすことにより中絶自由化への世論を導き出し、最終的には優生思想に基づく堕胎も「自己決定権」の名の下に正統化しようと言う医療利権複合体の深慮遠謀があるものと推察されます。
その安倍政権の路線を引き継いだのが岸田政権な訳ですが、安倍政権の時は辛うじて性犯罪の量刑を不十分ながら引き上げた訳ですが、岸田政権は安倍政権による量刑で充分だと思っているのか、今回の法制審議会の文書には厳罰化は盛り込まれていません。
私の基本的な考え方
私は基本的に、律令国家の復興こそが日本の歩むべき道であると考えています。
無論、古代の時代に合わない政策は改められるべきですが、こと性犯罪に関しては律令国家に見習うべき点は多い。
『養老律令』では強姦罪は斬首刑で、これは殺人や強盗致死と同じ量刑です。
一方、今の日本の『刑法』では強制性交等罪の量刑は強盗罪と同じ5年以上の拘禁刑。これではあまりにも低すぎます。
従って、強姦罪の量刑が殺人罪と同等になるようにするべきです。もっとも私は死刑廃止論者ですから、終身刑を最高刑とすることを提案します。有期刑、つまり「いつかはレイプ魔も刑務所から出ることが出来る」という今の量刑は、余りにも悍ましいものです。
また性犯罪の保護法益は「貞操」であると明確に位置付けるべきです。
戦後の左翼の性の解放論の影響を受けたのか、何故か「貞操」という言葉を使った瞬間、女性差別だと言われます。しかし一般論として貞操を守りたい気持ちは男性よりも女性の方が強く、それは女性には妊娠の可能性がある以上至極当然のことである訳で、そうした身体上の性差を無視することこそ男女平等であるという意味不明な屁理屈に付き合う気はありません。
そもそも、性の解放論を言っている人は表向き男女平等を掲げてはいますが、その本音は先ほど触れたように望まない妊娠を増やし、延いては堕胎を増やすこと、そのものでしょう。そうでもなければ、望まない妊娠が増える結果となることが明白な性の解放など誰も言いますまい。
つまり、性の解放を言う人間は例外なく、望まない妊娠を増やそうとする極悪人であることを認識するべきです。私たちは性の解放論者の主張と正反対に、貞操を保護法益として、女性の貞操は男性の貞操よりも一等重く扱う様にすれば良いのです。
念の為に言いますが、私は男性の貞操を軽視せよと言っているのではありません。男性の貞操も大切ですが、しかし、男性の貞操を重視すればするほど、男性以上に性行為のリスクの大きい女性の貞操はより重視しなければならない、となるのが自然な発想です。
また、不同意性交罪を創設するべきは勿論のこと、同意のある性行為でも相手の貞操を侵害するようなものについては罰するべきでしょう。麻薬であっても麻薬を売ることについて買い手の同意があったからと言って、無罪放免とはなりません。
薬物依存症の患者が心から麻薬を求めていても、その意思を尊重してはならないのと同様に、例えば、性依存症の患者が心から性行為を求めていても、その意思を尊重してはなりません。このように自己決定権には限界があるべきです。『日本国憲法』にも「幸福追求権」はあっても「不幸追求権」はありません。麻薬同様、客観的に見て不幸になることが推察される状況においては自己決定権が制限されないといけない場面が出てくるのです。
以上のことを踏まえて『刑法』改正の試案を考えましたが、私は『刑法』の全面的な改正がやがては必要になってくると考えているので、条数は現実の数字を基にした条数ではなくアルファベットで記すこととします。
第A条 公然猥褻罪
この規定は現行法では次のようになっています。
まず、何でもかんでも平仮名にするのはよろしくないので猥褻は漢字とし、また露出狂の中には悪質な者や常習性の高い者もいるので最高刑でも半年なのは軽すぎるため最高刑を一年とし、さらに下限が科料なのも低すぎるので罰金としました。
(罰金と科料では罰金の方が上です。)
第B条 猥褻物頒布罪
これは現行法ではこうなっています。
量刑以外には特に改めたところはありません。
第C条 強制猥褻罪
現行法では次の条文となっています。
条文の文言は法制審議会の内容も参考にしましたが、細かくケースを列記するのではなく、「甘言若しくは強圧」を含めたり「期待可能性」の概念を取り入れたりすることによって、より包括的に扱うことが出来るようになります。
また、強制猥褻罪自体は範囲が広いので下限自体に問題は無いとはいえ、範囲が広いからこそ上限が十年なのは短すぎると言え、この私案では上限は有期刑の範囲(二十年以下)であれば廃止しています。
なお性的同意年齢を二十歳とした上で、十代で結婚した場合は夫婦間に限り例外とするようにしました。性的同意年齢を十六歳にしてもまだ低すぎると考えます。
第D条 強姦罪
これは安倍政権による改悪前の『刑法』の規定を踏まえつつ、厳罰化をしたものです。
同意に瑕疵のある性行為自体が貞操への侵害であることは言うまでもありませんが、しかしながら、暴行や脅迫は他の瑕疵のある同意よりもより重大な侵害です。さらに姦淫には相手に望まない妊娠をさせる未必の故意があると言えるので、その点でもより重大な犯罪です。
一般にレイプは魂の殺人であると言われていますが、暴行や脅迫の時点で殺人と並ぶ悪行であるのに対して、望まない妊娠をさせる未必の故意もあることを加重処罰するとなれば、殺人罪よりも上位の罪とせざるを得ません。強姦で望まない妊娠をした場合は多くの場合は中絶されることになりますし、このような場合の中絶はほぼ不可抗力によるものであると言っても良いですから、殺人罪と不同意堕胎罪を併せた量刑でやっと妥当になります。
殺人罪の下限が懲役五年で、不同意堕胎罪の上限が懲役七年です。不同意堕胎罪の下限は懲役六ヶ月で、これまた赤ちゃんのいのちを奪う悪質な犯罪に対して低すぎる生命軽視の立法となっているため、ここは上限を参照せざるを得ないでしょう。そういう訳で、私案は懲役十二年を下限としました。
殺人罪よりも重いことに違和感を抱く方もおられるかもしれませんが、例えば今の日本では仇討ちが当然認められていないので、反社に親を殺された孝行息子がその仇を殺すと殺人罪で立件され、裁判官が「気持ちはわかる」として下限の懲役5年にはなるかもしれないが、少なくとも5年以上は刑務所に入らんと行けない訳です。対して、レイプ魔が親の仇を殺した孝行息子と同じ量刑であったりしたならば、どう考えてもそのレイプ魔への量刑が軽すぎると言わざるを得ません。
そういうことで、強姦罪の量刑を殺人罪よりも重くすることは当然であると考えます。
なお「姦淫」という言葉の定義から、二十歳未満の規定において婚姻関係にないことを要件にする必要は無いものと考えます。
第E条 強制性交等罪
これの現行法での規定は次の通りです。
要件の偏向は強制猥褻罪と同様ですが、量刑を「無期または七年以上」としたのは、現行法では強盗と強制性交等とを併せた罪しか例がありません。
しかしながら、貞操はどんな財物よりも価値のあるものです。
現行法では強盗罪と強制性交等罪とが同等でありますが、それでは低すぎるので、強盗の上に強制性交等も重ねた罪の量刑を参照してこの刑罰を定めました。これでやっと厳罰化と言えるのです。
第F条 不同意姦淫罪
現在の強制性交等罪よりも刑期の上限を高くし、さらに不同意の姦淫を全て該当とする、画期的な条文としました。量刑は殺人罪を参照しました。
法思想として、特に戦後は左翼の「性の解放」論に染まり性行為について「原則、良いこと。例外的に、悪いことがある。」という認識をされる方が多く、そのためあくまでも「例外」を罰するのだという事で、強姦罪の要件も厳しくなっています。
しかしながら、実際には強姦が「魂の殺人」という事は、本来ならば同意があっても殺人はダメですから、強姦に同意を得ただけのいわゆる「和姦」も本当は殺人と同罪であると言えます。
もっとも、現在の社会通念では同意のある姦淫にも殺人罪と同等の刑とすることは困難ですが、同意のない姦淫については一部の性犯罪者予備群を除くと重罰を科すことに反対しないでしょう。
とは言え、不同意の性交を処罰することにすら、岸田政権の法制審議会は反対している訳ですが。
第G条 瑕疵同意姦淫罪
同意のある姦淫を全て罰すると合法的な性行為との判別が困難となるので、客観的に見て同意に瑕疵のある状況における姦淫を罰する規定を設けました。
レイプが魂の殺人ですから、同意があってもそれに瑕疵がある場合の量刑は同意殺人罪の量刑を参照しました。但し、同意殺人罪の量刑も低すぎるので下限を少し高くしています。
第H条 集団強姦罪
安倍政権によって廃止された集団強姦罪を復活し、より厳罰化したものです。
その余の論点について
これまで提示してきた条文案の論理を推し進めると、強姦致死傷や淫行勧誘、監護者猥褻等についても規定を改めることは必然です。
ただ、こう言う問題については細かいところまで素人が突っ込むほど瑕疵の議論となりますので、私のこの案を叩き台に他の論点についても議論が進むことを願います。
なお、章立てについても問題があると考えます。
猥褻や強姦の規定のある『刑法』第2篇第22章ですが、ここでは重婚の罪も含まれています。
しかし、重婚罪の保護法益は貞操ではありません。また法律婚であることが処罰事由に限定されることから、どちらかと言うと『民法』的な秩序を守る規定であると推察されます。
他にも様々な論点があるでしょうが、本稿では性犯罪厳罰化の観点に絞りました。これを基に議論が深まることを期待します。
ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。