中国の歌は気持ち良い
中国のヒット曲「学猫叫」は何度聞いても気持ちよい。日本でもTikTokを通じて広まったようだが、日本人と感性が合うのだろう。
もっとも日本のマスコミでこの歌を取り上げたのは、私の知る限りウェブメディアで毎日新聞の元記者が書いた記事が一件のみ、しかもこれは中国でワクチン推奨のために行われた“替え歌”が直接の題材である。
中国のサーズ2型ワクチン接種率は9割を超えている。日本も8割を超えているが、人口が10倍以上あることを考えると、やはり中国では政府による統制が強いのだろう。
だが、元の歌である「学猫叫」自体は、そんな統制の強い国で作られたとは思えない、率直な感性を表現していた。
本居宣長が「漢意」を「万の事の善悪是非」を論じるものであると述べた時代はすでに過去のもの、今では中国人も理屈ぶらずに率直な感性を表現している。
もっとも、中国の歌手が歌っている動画を見ると、歌だけでなく見た目もかなり気にしている。動画時代は歌手も容姿で評価されてしまうルッキズム全盛期となって仕舞ったが、これは日本だけでなく中国も同じの様だ。
日本では「台湾の歌手」として知られているテレサテン(鄧麗君)も、父親は中華民国の軍人であり、本人も「中華民国」にアイデンティティを抱いていた“中国人”である。台湾でヒットした曲もかなり「中国」の文化的影響が入ってきている。
台湾では最近、ヒット曲「新鴛鴦胡蝶夢」で知られる黄安氏が調子に乗って韓流アイドルTWICEに参加した周子瑜氏が中華民国の国旗を掲げたことを非難したため、顰蹙を買った。黄安氏は周子瑜氏も中国人なのだから「中国の国旗」を掲げなければならない、というのである。
しかしながら、周子瑜氏も自分が中国人だと自認しているからこそ、中華民国の旗を掲げたのである。どちらも「台湾は中国の領土である」という命題を認めた上での「一つの中国か、二つの中国か」という、実に下らない議論であった。
とは言え、この件が話題を集めたのは二人共音楽界の大物であったからであり、音楽界を中国文化が席捲していることを象徴している出来事でもあった。音楽界の大物が政治的なことで争うのは世も末な感じがするが、ミュージシャンはノンポリで当然という雰囲気のある我が国も異常なので、中国の良さなのかもしれない。
ところで、日本のマスコミやネットユーザーの中には、周子瑜氏が「台湾の国旗」を掲げたというデマを平気で流す輩がいる。青天白日旗が中華民国の旗であることを知らないバカはいないので(人をバカにするのは良くない)、彼らは意図的にデマを流しているのである。芸能記事にまで政治的なデマを書きまくるのであるから、日本人は政治に無関心な振りを装いながら、下らないことでは極めて政治的になる。
そう考えると、中国大陸の「学猫叫」は完全に政治的な色が無い。もしあれば当局に睨まれてしまう。ノンポリな振りをしながら政治的なデマを平気で流すような感性に堕した輩に良き文化など作れるはずがないのであり、中国の歌がヒットするのは今の日本人には無い純粋さを中国人の方が持っているからなのかもしれない。
冒頭に「学猫叫」がニュースになっていない、と書いた。
我が国では芸能関係の話題はすぐにニュースになるのに、中国の話は全く報道されない。韓流ブームは起きても「漢流ブーム」は起きないように巧みに情報統制されている。
私も政治的には中国共産党とは対立しているが、政治活動している私は中国の音楽でも良いものは普通に聞くのに、ノンポリを装う芸能界や政治的中立を装う報道界が中国文化を無視しているのは、戦後の日本、否、東夷倭族共和国の醜さを象徴している。