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信教の自由への国の不当な介入を許す新法に反対します
令和4年(西暦2022年、皇暦2682年)12月8日に衆議院を与党と立憲民主党、社会民主党、国民民主党、日本維新の会等の主要野党の賛成により通過した「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律案」(以下「寄付勧誘防止法案」)に対し、私は立憲民主党の方針を理解しつつも「宗教的真理に対して国が合理性を求めることで、信教の自由を侵す危険性があることから、成立に反対」とした生長の家の声明に対して、一個人として賛成します。
なお、立憲民主党を含む民主党系の政党は一法案を巡る賛否を理由として除名等の処分を下したことはなく、今回の件について私が疑義を表明することは反党行為には当たらないと解釈します。
その前に、今回の法律案が出来た経緯を確認します。
そもそも立憲民主党は政府よりも先に「悪質献金被害救済法案」を社会民主党や日本維新の会と共に共同提出していました。この内容には私は賛成です。
ところが、今回政府が提出した「寄付勧誘防止法案」は「悪質献金被害救済法案」とは、そもそも目的からして違うものでした。
まず「悪質献金被害救済法案」の目的はこうあります。
第一条 この法律は、特定財産損害誘導行為により多くの者の財産に著しい損害が生じていること並びに特定財産損害誘導行為の被害者及びその家族等(以下この条及び第二十条において「被害者等」という。)にこれらの損害に起因して家庭環境の著しい悪化その他の生活の全般にわたる多様で深刻な被害が発生していることに鑑み、特定財産損害誘導行為を禁止し、特定財産損害誘導行為を行う者に対してその中止等を勧告し又は命ずる措置を定めるとともに、特定財産損害誘導行為による意思表示の取消し等に関する制度及び特別補助に関する制度を設け、あわせて特定財産損害誘導行為による被害者等の保護に資する相談体制の整備等について定めることにより、特定財産損害誘導行為による被害の防止及び救済を図ること等を目的とする。
次に「寄付勧誘防止法案」の目的はこうです。
第一条 この法律は、法人等(法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるものをいう。以下同じ。)による不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めることにより、消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)とあいまって、法人等からの寄附の勧誘を受ける者の保護を図ることを目的とする。
色分けしたところが、単なる表現の違いに留まらない相違点です。
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一見して判るように、「悪質献金被害救済法案」には被害者の「救済」を目的としていますが「寄付勧誘防止法案」ではそれが消され、法人等への規制を行うことが前面に出ています。
それでは、具体的な規制の内容を見てみます。問題となっているのは「寄付勧誘防止法案」の第4条第6号です。
第四条 法人等は、寄付の勧誘をするに際し、次に掲げる行為をして寄付の勧誘を受ける個人を困惑させてはならない。
(略)
六 当該個人に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、当該個人またはその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、もしくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、またはそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該寄付をすることが必要不可欠である旨を告げること。
「悪質献金被害救済法案」にも似た条文はありますが、一見して判るように「寄付勧誘防止法案」と比べて詳細な規定があるため、位置付けが異なっています。
第二条 この法律において「特定財産損害誘導行為」とは、人に対し、次に掲げる行為その他の人の自由な意思決定を著しく困難とするような状況を惹起させる違法若しくは著しく不当な行為(以下「困難状況惹起行為」という。)を行い、又は困難状況惹起行為により惹起された状況を利用して、その人の財産に著しい損害を生じさせることとなる財産上の利益の供与を誘導することをいう。
一 次に掲げる方法により、人に著しい不安又は恐怖を与える行為
(略)
ロ 霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままではその人に重大な不利益を与える事態が生じる旨を示すこと。
(略)
2 前項の著しい損害に該当するかどうかの判断は、標準的な年収を得る者においてはその財産上の利益の供与に係る額がその者の年間の可処分所得の額の四分の一に相当する額を超える額となるかどうかを目安の一つとして、財産上の利益の供与を誘導された者の資産及び収入の状況、生活の状況その他の諸事情を考慮して行われるものとする。
念の為に言いますが、どちらも省略したのは各号の列挙事項だけです。列挙事項の違いも勿論ですが、それ以外の条文も「寄付勧誘防止法案」はあまりにもシンプル過ぎて拡大解釈の余地が大きすぎます。
![](https://assets.st-note.com/img/1670554654839-ZrQEbTaZww.png?width=1200)
一言で言うと、「悪質献金被害救済法案」では財産に著しい損害を生じさせるような行為を禁止しているのに対して、「寄付勧誘防止法案」では「困惑」させること自体を禁止しています。「困惑」と言う主観的な要素で禁止できるのであれば、どのような法人の運営にも政府が干渉することが出来てしまいます。
とくに宗教事項については、拡大解釈の傾向が顕著です。
「悪質献金被害救済法案」では「重大な不利益を与える事態が生じる」として「人に著しい不安又は恐怖を与える行為」が規制の対象です。これはいわゆるカルトによる勧誘を規制するものとして妥当な表現です。
しかし、「寄付勧誘防止法案」ではそれに加えて「不安を抱いていることに乗じて」という表現が入っているため、不安を煽っておらずむしろ不安を抱いている人を安心させようとしている宗教家や占い師、カウンセラー等も規制の対象となり得ます。
特に「困惑」させるだけでアウトになる以上、拡大解釈によりいくらでも規制可能となる訳です。
私はこのような「寄付勧誘防止法案」の内容は岸田政権が専ら宗教弾圧を行うために定めたものであると理解し、これまで立憲民主党が制定を求めて来た「悪質献金被害救済法案」とは全く目的の異なるものであり、被害救済が喫緊の課題である昨今の情勢に照らして本法案に賛成した立憲民主党執行部の方針を理解はするものの、私個人としては「寄付勧誘防止法案」に反対することを表明させていただきます。
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