一般質問解説④「不当な子供の連れ去り」は精神的DVです。
・「DVのおそれ」で、単独親権になる。
共同親権が導入された改正民法819条7項2号では、「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無」が親権指定の際に考慮される、と明記されています。
すなわち、「DVのおそれ」がある場合には、家庭裁判所が単独親権としなくてはならない、と規定しています。
共同親権反対派の皆さんの論拠でもある、「共同親権では、DVの相手から離婚後も逃げられない」という懸念は、この条文によって解消されています。
・『虚偽DV』は防げるのか?
杉並区では、DV支援の一環として「配偶者暴力相談支援センター」の機能を整備し、DV専用ダイアルの設置、DV被害者相談の証明発行、DV被害者に関する通報受理、保護命令制度についての情報提供・利用支援など総合的支援を行っています。
裁判所が単独親権指定の根拠とする、「DVのおそれ」の存否は公的機関の発行する『DV証明書』が有力な証拠となります。
この発行を、杉並区では上記センターが管轄します。
杉並区では令和5年度、DV相談証明書は170件発行されています。(区民生活部長答弁より)
もっとも、この「DV証明書」は相談後の希望者にもれなく発行されている自治体が多くあります。
すなわち、被害を申告した方の主張通り証明書が発行されることになりかねないのです。
これでは、いわゆる「虚偽DV」を精査することができないのではないか。
このことに私は課題意識を持ち、杉並区の精査体制を問いましたが、明確な答弁はありませんでした。
国会では参議院決算委員会において、日本維新の会梅村みずほ議員が「DV等支援措置」において、疑われた人が反論の機会もないまま、加害者にされてしまいうる制度となっていることについて、質疑をされています。
梅村みずほ議員の質疑は、これと抱き合わせの親権獲得のための連れ去りについても触れられており、大変参考になります。
入管法議論の、正義に基づく涙の質疑を何度も拝見しており、他党ではありますが大変尊敬している議員の一人です。
また、DV等支援措置は「ありもしないDV」を主張して受けられる、と弁護士の方も自白しています。
・離婚後親権獲得の為「不当な子供の連れ去り」が行われる。
これまで、家庭裁判所による親権決定は、「監護の継続性」が重視されてきました。
「監護の継続性」とは、子どもの養育状況に問題がない場合、それまで養育していた人が引き続き養育することが望ましいという考え方です。
子どもの生活環境が変わってしまうと、子どもの精神状況が不安定になってしまう、という理由です。
そこで、離婚後に子供の親権を得たいと考える親が、もう一方の親に無断で、行く先も告げぬまま子供を連れて家を出る。
その後、事実上の監護状態を一定継続したのち離婚協議に入る、というケースが親権獲得のためのモデルケースとなりました。
そして、裁判所もそれを事実上追認する、という運用がされていました。
『親権が欲しければ連れ去った者勝ち。』
これがいわゆる「不当な子供の連れ去り」=「実子誘拐」です。
これについては、ひろゆきさんが端的にお話しされている動画を見つけましたので、リンクを貼っておきます。
・国際的に非難を浴びる、実子誘拐への日本の対応
令和2年7月、EU欧州議会本会議は 、日本での親による子供の連れ去りから生じる子供の健康や幸福への影響について懸念を表明し、日本政府に対して、ハーグ条約を履行し、「共同親権」を認めるよう国内法の改正を促す決議を採択しました。
https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/5th/sidai/pdf/06/ss01.pdf
また、令和4年年11月には、国連人権委員会から日本政府に対して、日本における「実子誘拐」問題に適切に対応するために必要な措置を講じ、国内・国際間の事例を問わず、子の監護に関する決定が子の最善の利益を考慮し、実務上完全に履行することを確保するように勧告が出されています。
このように、日本は世界から実子誘拐、子供の不当な連れ去りへの適切な対応を早期に行うように求められています。
外国人から見れば、日本は誘拐大国などと揶揄されている時期もあり、早期な対応が必要です。
日頃から、「世界では○○!日本は遅れている!!」「世界における日本のジェンダーギャップは酷い!」など、世界基準を持ち出し日本サゲを好んで行う左派の皆さんが、この問題に関しては突然国際標準についてダンマリとなるのが、なんとも滑稽な話です。
・「不当な子供の連れ去り」はDVか。
改正民法819条7項2号において、「DVのおそれ」がある場合、家庭裁判所は単独親権とすることを明文化しました。
その為、改正民法の法案審議の際、多くの政党や議員から「不当な子供の連れ去り」がDVとなるかどうか、が議論になりました。
仮に、これがDVと認定されることになるのであれば、これまでの裁判実務で運用されていた、『親権が欲しければ連れ去ったもの勝ち』が通用しなくなるからです。
この点についてまず、令和6年4月5日の衆議院法務委員会における、自由民主党みたに英弘議員が質疑をされました。
みたに議員はこの委員会で、
Q .【子供を特段の理由なく連れ去り、別居親に会わせないことは、精神的 DV に当たるという認識で良いか】
これに対し、法務省民事局長は
A .【無断で子供を転居させ、特段の理由なく別居親と一切交流させない場合は、個別の事情によるものの、これにより心身に有害な影響を及ぼしたと認められる時には、DV に該当する可能性もあり得る】
と答弁しました。
同日、立憲民主党の米山隆一議員の質疑でも、法務省民事局長が同じ答弁をしています。
なお、米山議員はこの日の質疑について、下記のSNS投稿をされています。
「子供の連れ去り」は、居所秘匿・連絡遮断・子供との交流断絶です。
米山議員のいう「子連れ別居」とは別物であることに留意が必要です。
いずれにせよ、共同親を推進していたみたに議員と共同親権導入を疑問視していた米山隆一議員。
共同親権推進と反対の、全く異なる立場の両議員の質疑で、「不当な子供の連れ去りが、精神的DVになりうる」と示されたことは、大変重要なことです。
・杉並区では「不当な子供の連れ去り」が、精神的DVになります。
これらの法務委員会質疑、そして、国会における改正民法成立をうけて、私は、杉並区に「不当な子供の連れ去り」被害者が相談に来た場合、DV被害者と認定される可能性があるか、DV相談証明書を発行するか、確認しました。
区の答弁は「個別具体的な事情において判断する」という煮え切らない答弁。
これではいけない、と再質問をし明確な答弁を求めましたところ、「個別具体的事情を判断した上で、DVに当たるケースはある、と認識している」と答弁をいただきました。
・左派勢力の攻め手を一つずつ摘んでいく。
今回の私の質疑の「不当な子供の連れ去り」の質疑の目的は2つありました。
左翼弁護士・共同親権反対派が頑なに拒絶反応を示す「実子誘拐」「虚偽DV」「不当な子供の連れ去り」という言葉を議事録に残すこと。
杉並区では「不当な子供の連れ去り」がDVになりうることを明確にすること。
これら、2つの目的は無事に達成できました。
次号の杉並区議会だよりにも、「子供の不当な連れ去りはDVになりうる」旨、明記してあります。
多くの区民の目に触れるよう、こちらは積極的に広報したいと思います。
改正民法が施行されるまでの2年間、運用に向けて様々な動きがある中で、いまだに共同親権に反対し続ける勢力は「子供の不当な連れ去りはない!」「虚偽DVというなんて酷い!」などと喧伝し、その運用を妨げようとしています。
こうした勢力の根拠のない主張をしっかりと潰していくことが、基礎自治体議員としての役割であると思います。
しかし残念がら、左傾化の進む自治体ではいまだに共同親権を阻止しようと熱心な活動が目につきます。
先日は東京都小金井市でも、「子どもの権利を置き去りにする「共同親権」に関する民法改 正の撤回と抜本的な見直しを求める意見書」が可決されてしまっています。
こうした小金井市でも、心ある仲間の議員が最前線で戦ってくれています。
仲間の清水がく議員を、ぜひ応援いただければ幸いです。
・岸本聡子杉並区長が公募した男女共同参画担当課長。「不当な子供の連れ去り」を認識せず。
今回、一般質問をするにあたり、担当所管と様々ヒアリングを行いました。
その際、岸本聡子杉並区長が公募で採用した、男女共同参画担当課長とお話をする機会がありました。
女性団体支援等を行なってこられ、また、新聞社勤務という多くの情報に触れる立場にいらっしゃった方ですので、当然「不当な子供の連れ去り」で苦しんでいる方がいることもよくご存知と思っていました。
しかし課長は、「私自身は、不当な子供の連れ去りという案件を認識していません」とのことでした。
大変驚きと共に、残念な気持ちになりました。
不当な子供の連れ去りの被害者の9割は男性と言われていますが、裏を返せば1割が女性です。
女性団体支援を行なってきたにも関わらず、このような被害女性の支援にあたられたことが、課長にはなかったようです。
・連れ去り指南の証拠流出。世田谷区の女性限定離婚講座。
男女共同参画課長には私から、世田谷区において非公開で行われた「女性限定離婚講座」における、宮下真理子弁護士(共同親権反対派弁護士)の流出音声を紹介しておきました。
以下引用です。
いかがでしょうか。
弁護士が子供の連れ去りを指南している、これが現実です。
改正民法の審議過程で、「不当な連れ去りがDVになりうる」ことが示され、法文でDV親が親権を得られないことが明記されました。
今後、この世田谷区で講座を行った弁護士が指南したような実子誘拐スキームは、どんどん白日の元に晒されていくでしょう。
これが、共同親権が導入された改正民法は「子供の不当な連れ去り防止」の効果がある、と言える理由です。
・さいごに
多くの基礎自治体は、DV相談窓口をもっています。
先進自治体では、窓口利用に男女差を設けていませんが、いまだに「女性専用」とか、男性用の時間が短い、といった「男女差別」的取り扱いをしている自治体も散見されます。
DVといっても態様は様々ですが、この「子供の不当な連れ去りによる精神的DV」被害者の9割は男性と言われています。
DV相談体制のあり方も、これを契機に変えていきたいと私は思っています。
次回の記事は、「杉並区のジェンダー平等施策=男性差別?」についてです。