【古典映画】「悪い奴ほどよく眠る」
黒澤明監督の、1960(昭和35)年のモノクロ映画「悪い奴ほどよく眠る」。主演は、また三船敏郎。
土地開発公団の大規模な汚職(不正入札)に絡み、その犠牲となって死に追いやられた男の一人息子(三船敏郎)が、汚職の中心にいた政財官の有力者に復讐していく、という社会派サスペンス・ドラマだ。
自殺した男の息子は、公団の副総裁の娘と結婚して、副総裁の秘書となって有力者に接近して、中に入り込むが…。
テーマが俺の好みじゃないけど、コレも可もなく不可もなくだったなぁ。ちょっといつもよりも冗長過ぎるかな。
復讐に動く息子が、偽装で結婚した娘に本気で惚れて、最後は、“闇の組織”によって消されることになる。←アリガチ
ハードボイルド気味の展開だが、片足が不自由な副総裁の娘が、純な気持ちで息子に接するのはいじらしくて、こんな天使のような娘さんを泣かしちゃいかんぜよ、と昭和のジジイは思ってしまうね。
当時は、こういう汚職が社会問題になってたのかな?クロサワさんらしい食い付きだけど、政財官一体となった、甘い汁を吸おうとする巨悪に闘いを挑むものの、ラスト、意思半ばにして倒れるという流れは、ジャーナリスティックな視点というよりも、ある意味で、クロサワさんらしい至極単純な発想による話題作りだったのでは。問題提起まではいってないと思う。
汚職の片棒を担がされた役人の男が言う。
「あなた方は役人の気持ちを知らない。役人は上司に累を及ぼすようなことは決して言わない。例え我が身がどうなろうとも」。
また、復讐に動く息子の仲間が言う。
「奴は人じゃない、役人なんだ。官僚機構の鋳型に嵌め込まれた特殊な生き物だ。ここまで来ても忠義面して上役を助け出す気になりかねん」。
娘が出て行っても、電話に向かってペコペコ頭を下げる副総裁。
多分、この当時から、日本は、本質的には、あまり変わってないのだろうなぁ。
やっぱり悪は強い、勝つ。巨悪であればあるほど。
さて、クロサワ映画は、あと2本で全作品鑑賞となる。