「秘密と嘘」
最後、ジーンときてウルウル泣いてしまったマイク・リー監督の「秘密と嘘(Secrets & Lies)」(96年・イギリス)。
カンヌ国際映画祭で最高のパルム・ドール賞に輝いた。
特別に派手な展開もなく、イギリスのある家族・血族の日常と予期せぬ出来事を描いたものだけど、繊細な真理描写で、シミジミと良い映画だなぁと感激に浸ることができた作品だった。
10代から働き、子供を産み育てて、弟の世話までして、中年となったシンシア。今だに夫も友人もなくて、自分の娘ロクサーヌにはお節介が過ぎる完全な毒親となってる。ロクサーヌも母親に対する不満からいつもイライラしてた。ある日突然、産まれてすぐに養子に出した黒人の娘ホーテンスがシンシアを探し出して連絡して来たことからシンシアは変わっていく…。
まさか白人から黒人の子が!?と思ったけど、父親が黒人だったのね。
その存在さえ忘れてた知的な検眼士の娘ホーテンスと出会ったことで、くたびれたオバさんのシンシアも、やっと幸せの意味がわかってくる。
ロクサーヌの誕生日パーティにシンシアがホーテンスを招待したことで、それまで内密にしてた実の娘ということが明るみになって揉める。
その他、一見、写真屋を営み成功してる弟モーリスも、妻の不妊で妻と共に悩んでることがわかり、弟も娘もシンシアも、家族というのは名ばかりの幻想で、皆、それぞれ問題を抱えており、今まで積りに積もった不平不満が噴出する。
そして、嘘と秘密ばかりだった家族はそれぞれ助け合うことができるようになっていく。
白人のロクサーヌ(妹)と黒人のホーテンス(姉)が庭で仲良く語り合い、そこに2人の母親であるシンシアが、作ったサンドウィッチを持って来るというラストシーンは静かでホノボノとしてて、こういう日常が本当の幸せというものかもしれないと思わせる。
そりゃ、人は生きてれば、例え家族であっても(いや、家族だからこそ)、嫉妬や嫉み、憎しみ、嘘に秘密、依存、懐疑心など負の感情と決して無縁ではいられるものではないけど、それをぶつけ合い明らかにしていくことで、身内ならではの“絆”ってものが生まれるのかもしれないね。
昔から家族って意識が特別に弱い俺には、経験したフィリピンのファミリー至上主義を思わせて、羨ましいやら、妬ましいやら、俺とは無縁の世界だなぁと考えちまうやら、観てて感情が溢れるように出て来ちまった映画だった。だから涙したのだが。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。