【古典洋画】「道化師の夜」

スウェーデンの名匠、イングマール・ベルイマン監督の、初期1953年の小品「道化師の夜(GYCKLARNAS AFTON)」。Amazonプライムにて。

小津安二郎監督の「浮草物語」に似てないこともない。

巡業サーカス団の座長アルベルトが、若い女曲馬師アンナを愛人にして興行を続けている。
一行は、アルベルトの別れた妻と子供が住む町へとやって来る。
アルベルトは、妻の家を訪れて復縁を望むが、妻に拒否されてしまう。
アルベルトが妻のもとを訪れたことを知ったアンナは激しく嫉妬、町の劇団の若い男優に身を任せて暴行されてしまう。
そのことを知ったアルベルトは、サーカスの興行中、見物に来たその男優と決闘する。
しかし、コテンパンにやられて、惨めな自分の姿を見て泣く。
絶望で自殺することもできずに、サーカスの熊を銃で撃ってしまう。
お互いに傷付いたアルベルトとアンナは、慰め合うように寄り添い、次の巡業地へと旅立って行く…。

アルベルトは優しいけど、威圧的でどうしようもないクズ男であり、アンナは若くてキレイで豊満な胸が強調されるが、感情の起伏が激しくて、すぐにヒスを起こす。

底辺でサーカス巡業を行う下層階級の人間同士が、泣き笑い、いがみ合いながらも、一緒に旅を続けて客の前で興行を行う。そして、お互いに屈辱の時を迎える。

確かに、アルベルトは妻に拒否され、アンナは暴行されて、悲劇であるのだが、喜劇のようでもある。そこに、ベルイマン監督の、底辺の人間の営みに対する愛のある優しくて暖かい目を感じる。

鏡や影を使ったカメラワークも秀逸だ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。