「きけわだつみのこえ」
昨年末に読んだ厚い文庫…。コメダで読了(笑)。
出征を命ぜられた学徒兵たちの手記や手紙、遺書、走り書き、短歌・俳句の数々。一昨年の正月に行った鹿児島・知覧の特攻(遺書)博物館を思い出した。
最高学府の大学で学問を学んだ自分と、これから死に行く自分との整合性を必死で模索してる様が痛いほどわかってたまらない。
手紙などは当然、検閲されるから、“御国の為に立派に死んでいきます”との決意が前面に出てるけど、家族や国の未来を想いながらも、自分に決定付けられた死をどう理解するか散々苦悩している様子が文面からも伝わってくる。
下は18から上は27くらいまでの若者だけど、なんと知性に溢れた立派な日本語なんだろう。今じゃ出版関連で働いてても訳のわからん文章を書く人もいるってのに(笑)。
戦争に批判的なトーンの書き物ばかりで、多分、少なくない日本の精神主義賛美、戦争謳歌の書き物は省かれてて、出版当時は批判もあったらしいけど。
そういうイデオロギッシュな出版物だとしても学徒兵の死を前にした書き物はやはり胸を打つね。
外国の哲学書やマルクス、レーニンの出版物なども出てくるけど、当時は閲覧が許されたのだろうか?中には敵・米英の自由主義を受け入れてる内容もある。
書物の一字一字に◯が付けてあって、それを辿っていくと恋人への遺書が浮かび上がってくるってのもあった。
最初に学徒兵の名前があって、来歴があって、戦死、爆死、病死…と続く。なんと悲しいことよ。
最後、戦犯刑死の上等兵の手記が載ってるが、日本のために働いたのに責任を取らされて刑死するという本人の無念を感じるが、もう言い訳はすまい、死を受け入れようとしながらも、くどい、しつこいほど遺族に頼み事をしてるのは、ある意味、日本の精神主義の実態を見たような気がした。
しかし、当時の上官はクズが多いね。何かと理由を付けて殴る蹴るは当たり前だったのか。まあ、本人も死を前にして上と下との板挟みで焦燥感に駆られストレス発散の意図もあったのかもしれない。
とにかく強烈な反戦文学であろう。