【ソ連映画】「炎628」
伝説の、メンタル崩壊級・戦争映画「炎628(come and see )」(ソ連・1985年、エレム・クリモフ監督)をYouTubeで見つけた。しかも日本語字幕入り。
…コリャ、凄まじいフィルムだ。
絶えず不協和音のインダストリアル・ノイズが流されて、頭がキリキリと痛んでしまう中、カメラが人物に肉薄して、疲労、諦め、絶望、困惑、不安、そして、狂気の表情を映し出す。
主人公は、赤軍パルチザンに参加しようとする、ナチス・ドイツ占領下のベラルーシの少年。
この少年が、まさに地獄を見るのだが、流浪の末に、ナチス・ドイツ軍の、悪名高きアインザッツグルッペン(特別行動隊)による蛮行・虐殺を目撃してしまう。
実際には、ベラルーシにあった628もの村が、アインザッツグルッペンによって、住民と共に焼き尽くされたのだが(死者は200万人以上)、当時のソ連製作だからか、容赦なくナチスの蛮行を描く。ラストは実際の映像も混じる。
最初は、パルチザンに参加しようと、決意に満ちた、比較的穏やかな少年らしい表情なのだが、展開が進むと共に、髪は灰色となって、顔はやつれてオデコにシワができて、眼は大きく見開いたままでクマができ、常に泣いてるような表情となってしまう。少年でありながら、地獄を見たために、すでに老人となってしまったのだ。
実際でも、この少年は撮影のために精神的に追い込まれたのではないだろうか?そうでもないとこの表情は出ないだろう。
前半、一緒に放浪した美少女も、汚れてアザだらけ、股からは血を流して、明らかに精神は崩壊して、笛を咥えて佇んでいる。
30年後、大人となった少年は、コレも衝撃的な映画「異端の鳥」に出演している。
ものスゴい“胸クソ映画”であったが、コレが戦争の真実であろう。村人全員(子供も含む)を教会に閉じ込めて、火を放って燃やし尽くし、断末魔の叫びが上がる中、周りでドイツ兵たちが大笑いながら拍手喝采、銃を撃つ。阿鼻叫喚。
戦争の狂気をコレでもかと見せつけた、このソ連製作の映画は、プロパガンダ色も多少はあると思うが、コレ以上ない人間性告発の反戦映画となった。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。