「青春の殺人者」
傑作だった「太陽を盗んだ男」の長谷川和彦監督のデビュー作「青春の殺人者」(76年)。実際の両親殺人事件を扱った中上健次の小説を下敷きにしたもの。
恋人の悪口を言われたことを発端に、ブチ切れて親を殺してしまった青年と、その恋人の無軌道・無秩序な生き様と破滅的な末路を描く。
同じ様なテーマを扱った作品は邦画・洋画ともいっぱいあるけど、コレはATG(アート・シアター・ギルド)の作品だったんだ…。
60〜80年代に活動した、商業主義的な作品とは別の、アート志向の作品を製作・配給した映画会社の作品だけど、もう、過剰に叫ぶ劇団みたいな台詞や、いたずらに煽るだけの暴力とセックスの描写(当時、ヒロインの原田美枝子は高校生!)、いきなりの予想できない展開など、当時のアングラ・ムービーそのものって感じがして、食傷気味でウンザリとなっちゃった。
青い24歳の水谷豊の、抑揚がなくただ流れる台詞や演技は以降「傷だらけの天使」、「熱中時代」もずっと変わらないね。
当時17歳だった高校生の原田美枝子の「順ちゃん!順ちゃん!」って絶叫は棒読みだけど、若い巨乳のフルヌードだけはメッチャ素晴らしい(笑)。
また「家政婦は見た!」の市原悦子がシュミーズ姿のアブナイ母親の役で出てて驚いた。桃井かおりもチョイ役で出てる。
長谷川監督らしく、チラッと出てくる成田反対闘争やクルマがハマる海水浴場、ラストにスナックを燃やすシーンなど、低予算のため、多分、ゲリラ撮影が多かったと思われる。
多分、素晴らしいか、くだらない駄作かで評価は二分されたと思うけど、とにかく映像から若さ溢れかえるラジカルな怒りのエネルギーだけは充分感じた。
こういう映画を観てると、自分は、たまにレールから外れることがあっても、まだまだちゃんと秩序のある規則正しい生活を送ってたなぁと安心するね。