「悪魔のいけにえ」
「悪魔のいけにえ 公開40周年記念吹替版」(米・74年、トビー・フーパー監督←一昨年死去)
多分、一番好きなホラー映画で、これまでに5、6回は観てると思う。が、fire TVスティックによる日本語吹替で初めて観た。
トビー・フーパーも、よくもまあ、こんな奇怪なフィルムを撮ったもんだ。
人の顔面の皮で作ったマスクを被ったデブの大男レザー・フェイスは実在した猟奇殺人者、エド・ゲインがモデルといわれてるけど(流布伝説もあるらしい)、昔はフィギュアやTシャツなど、キャラグッズをたくさん持ってた。
最初の、溶けた蝋人形みたいな遺体?とアルマジロの死体のカットから始まって、車イスのデブっちょ障害者(動かなくなるから仕方なく太るのだよねー)、フランクリンの情緒不安定な足手まといっぷり、汗かいて臭そうな風体からも、米・テキサス州のジワジワと襲う狂いそうな蒸し暑さが伝わってくる。すぐにレザー・フェイスに簡単に八つ裂きにされるが、正気の側から、レザー・フェイス一家の狂気を盛り上げていく良いキャラだ。
ガススタンドでレザー・フェイス一家の長男が出て来ると、合わせてフロントガラスを拭きに出る知恵遅れの男など、こういうキャラを登場させるなんて上手過ぎる。
顔に血のようなシミがあるヒッチハイカーの三男も定番のクレイジーさで良いが、俺は「2」で搭乗する双子の片割れ、チョップトップの方が好きだな。
レザー・フェイスがパッといきなり登場して、トンカチでブン殴って、鉄の扉をガーッと閉めるシーンが何度観ても素晴らし過ぎて震える。殴られた男もバタバタと脚を痙攣させて、こんな描写は初めてだった。恋人も生きたままフックで吊るされ痛過ぎる。
レザー・フェイスが登場してからは、捕まった女の子、サリーの血を吐くような必死の叫びとチェーンソーのノイズが圧倒的で、どこまでも痛くて、頭にキリキリと響く。凄まじい。
ここまでやられたら、助かっても、死ぬまでトラウマとなって精神的にオカシクなるだろう。
殺した人間や動物の骨で作った家具やオブジェはゲージュツだね。よく考えつくよ。
最後の、サリーを逃してしまった後の、朝陽をバックにチェーンソーを振り回すレザーフェイスの舞い、憎い演出だなぁ。
BGMが全くなく、カーラジオから流れる音楽だけなのもリアルで良い。
暑さと残虐性と叫びと狂気のキャラ、低予算でも、いずれも過剰な演出が大成功してる。
レザー・フェイス一家は食肉加工処理場で働いてたというが、日本でいえば、昔は隠された地域。終末処理場、狂気の異世界に迷い込んでしまった若者たちの悲劇だが、実は正気の世界にいても一歩間違えば容易に狂気の世界に陥るのだ。