「モンスター」
犯罪者の伝記もの「モンスター(Monster)」(2003・米)。「ワンダー・ウーマン」のパティ・ジェンキンス監督。
アメリカの女連続殺人鬼アイリーン・ウォーノス(男7人殺しで2002年に薬物注射で死刑執行)の生涯をシャーリーズ・セロンが演じた。
あの長身でスリムな美人セロンが、体型もダラシなく変えて、顔もソバカスだらけのノーメイクで、アイリーンにソックリになってて驚いた。そういや彼女、マッドマックスでも坊主頭になってたし、向こうの女優さんの役作りはやっぱスゴいねぇ。
売春婦をしてたリーは、レスビアンのパートナーとなった女の子セルビーとホテル住まいをしながら、金を得るために殺人を繰り返す。リーも一時期は真面目に働こうとしたけど、学のない経歴と、すぐにカッとする性格でまともな職にありつけずに、結局、売春婦に戻ってしまう。客の暴行を受けて“正当防衛”から、客が持ってた銃で撃ってしまったことをきっかけに、男を誘って銃で撃って金を奪うようになる。
ほとんど真実に近いストーリーだけど、幼い頃からネグレクトで両親と祖父母に激しい児童虐待を受け、親父は精神を病んで自殺、生きるために11歳から身体を売ってたというアイリーン・ウォーノスは、いったい何で、何のために生まれてきたのだろうとかわいそうを通り越して、虚しくなるね。だから、唯一信頼してたセルビーとの蜜月関係だけは微笑ましく見れる。
連続殺人を知ったセルビーが裁判で証言してリーを裏切る。リーは激しく後悔するとともに、セルビーに対する愛を捨てきれずに号泣している。ラスト、強がって暴言を吐きながら死刑に臨む。
そういうアイリーンを、美人女優シャーリーズ・セロンが普通以上に疲れたブサイクなオバサンに変身して演じている。
生まれに原因があるような悲しい救いようのない物語で、同じ殺人者でも、ボニー&クライドやテルマ&ルイーズの様な明るさは全く感じないし、面白いとは間違っても言えないなぁ。
演者も監督も、レズビアンに近いということで、自立と社会や男との軋轢、結果としての犯罪という女の人生を描いたフェミニンな作品の一面もあると思うけど。