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「愛の渇き」
三島先生のちょっと怖い小説「愛の渇き」のモノクロ映画化作品を見つけたから、俺としては、こりゃ観なきゃいけない。蔵原惟繕監督(クラハラって「奔馬」に出てきた資本家で主人公に暗殺される 笑)で、67年の封切り。
主人公の未亡人・悦子を浅丘ルリ子が演じる。彼女は、俺の中では、「寅さん」に出てきたマドンナの、庶民的な踊り子のイメージが強かったので、目が大きくて唇が厚いクールな感じの上流階級の夫人を演じきっていて、それが素晴らしくて驚いた。
原作も同様、最も怖いのは、女中のミヨが使用人の若者・サブローの子どもを身ごもったと知って無理矢理に堕ろさせるところと、最後の、サブローを鍬で惨殺する場面だ。身体を許してた舅に「なぜ殺した?」と問われ、「あたくしを苦しめたからですわ」と答えるなんてスゲー恐ろしい。
悦子は、サブロー(石立鉄男だったとは!)が好きになってくるが、プライドもあって決して素直にはなれない。サブローは欲望に素直な、単なるノーテンキな単細胞男なのだが、彼の言動・行動に激しい憎悪と嫉妬を感じてしまう。一方で、二人で仲睦まじく手を繋いで街を歩くことを想像していたりもする。三島先生お得意の、女のアンビヴァレンツな心理描写を若き浅丘ルリ子が狂気を感じる演技でこなしてる。
カメラアングルも上から撮ったり、流したり、当時としては斬新だったのでは、と思う。
夫を亡くした悦子が、愛の末の幸福を求めてるが、それは日常生活と同等の退屈に他ならないのであって、必然的に残酷な人間性で自分を満足させてしまう。それが結果はどうであれ、愛した対象を徹底的に破壊することだったのだと納得した。
三島先生も、この映画は絶賛したらしい。
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