「興行師たちの映画史」
「映画は詐欺だ!」by若松孝二
ただ、観客席が満員になればイイ、ただ、儲かればイイ、あとは知らん…。
エクスプロイテーション(Exploitation)・ムービーとは、1950年代にアメリカで始まり、センセーショナルでウケを狙った出来事や犯罪、暴力、ドラッグ、各種タブー、エロ等を全面に出した、いわゆる“低俗”な映画のことである。
客から金を“搾取”するためだけに、なるべく予算をかけないで量産される。
現代は、結果的にそうなってしまった作品はあると思うけど、意図的な作品は、ほとんど見なくなってしまった。
黒人ウケを狙ったブラックスプロイテーションや、エロもののセクスプロイテーション、ナチ女収容所モノのナチスプロイテーション、ショックメンタリーのモンド・ムービー、性教育モノ、香港カラテもの、サメ映画…等々、ジャンルは多岐にわたる。
本では、そうしたエクスプロイテーション・ムービーの始まりから興行、隆盛、仕掛け人、そして死までを、様々な資料を元に俯瞰する、俺にとってはベリー・エキサイティングな本だった。
搾取映画としてスタートしても、後年、様々な付加価値を生み、時代を象徴するまでに成長していった映画も多い。そのひとつがトッド・ブラウニング監督の「フリークス」である。映画草創期の見世物と興行・巡業的な雰囲気をそのまま表してる同映画は、今やカルト・ムービーの金字塔といってもいいだろう。奇形の人間たちの復讐劇は当時、観客に、かなりのショックを与えたことが想像できる。
他にも、実にたくさんのフィルムが埋もれており、可能であれば観たいものだけど、時々、YouTubeなどの動画サイトにUPされることもあるので、マメに探す他はないだろう。
基本、搾取映画に限らず、映画は、観客に向けたものである限り、いかがわしい魅力に満ちた表現なのだ。少なからず、ショッキングな宣伝文句で観客に訴えるものであり、どんなに高尚なテーマであっても、客が入らなければ、成り立たないものである。
俺がコレら搾取映画を愛してやまないのは、時に監督の映画愛を感じることと、時代を経て人間の業を感じることがあること、それにガキの頃に見た見世物小屋やお化け屋敷、サーカスに通じるワクワク感があること、コレに尽きる。
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