「高峰秀子 夫婦の流儀」

また、養女である斎藤明美編のデコちゃん夫婦の本。

デコちゃんは、晩婚となる30歳で脚本家の松山善三と結婚したが、その際に交わした“約束”は…「女優なんて所詮浮草稼業。やがて私が単なるお婆さんになった時は、あなたが働いて私を養ってください」(デコちゃん)、「はい、わかりました。一つだけお願いがあります。一生、たくわんだけは食べないでください」(善三)…。以降、55年間、コレを守り通した。

結婚当時は、デコちゃんは大スターで月に三桁万円稼ぐのに対し、善三は映画会社のサラリーマンで月給二万円弱という格差婚だった。

2人に子供はいない。善三は欲しがったが、海外で検査したところ、デコちゃんは産めない身体だった。だからといって夫婦間に危機があったなんてことはない。

後年、デコちゃんは、「バタバタ走り回る子供の足音が聞こえるのが家庭だ。うちは家庭じゃない、巣だ。私のようなコマシャクれた子供が生まれたら、とうてい育てる自信がなかった。子供は嫌い」と書いてる。

夫婦喧嘩はほとんどないが、デコちゃんはヤキモチ焼きだったらしく、友達もいないし、血縁とも縁を切っているし、人間関係が一切なかった彼女は、夫・善三だけが、唯一無二の本当の意味での人間関係だったからだ。

だから、例え夫婦といえども、2人の間に礼儀は欠かせない。会話は基本、敬語だし、「ありがとう」を必ずいう。欠伸、ゲップ、くしゃみ、咳、オナラなど、失礼と思われる生理現象の類を相手に一切見せない。

無礼に行き着く馴れ合いがないのだ。ホントに美しい関係の夫婦である。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。