【邦画】「さらば愛しき大地」

柳町光男監督・脚本による、1982(昭和57)年の作品「さらば愛しき大地」。Amazonプライムにて。

「ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR」を撮った監督らしく、地方に根付く、社会の底辺に生きることを強いられた人間たちの生態を描く。

主演は、根津甚八と秋吉久美子。

80年代の茨城県のある町が舞台。
ダンプカーの運転手である根津甚八演じる幸雄は、地方の農家の長男。
両親と妻は農業に従事している。
次男の昭彦は東京に出て働いている。
幸雄は二人の幼い息子を溺愛してたが、妻が目を離してた時、二人で沼でボートに乗って転落して死んでしまう。
幸雄は妻に怒りをぶつけるが、その事件を機に、幸雄は、供養のために刺青を入れて、次男の恋人だった秋吉久美子演じる順子と関係を持つ。
お互いに寂しさを抱えた者同士で深い関係となって同棲を始める。
実家と愛人との二重生活を続ける幸雄は、運転手の仕事も減り、荒れていく中で、ついに覚醒剤に手を出す。順子との生活も破滅を迎える…。

個人よりも、家柄と世間、プライドをことのほか大事にする地方都市で、中央に反発して、建設業を中心とする肉体労働や運転手に従事し、地元スナックなどの酒場でストレスを発散し、狭い社会でのみ性やドラッグに乱れていく…まさにチバラギなどに育つ土着のヤンキーの世界である。

ダンプの運転手が覚醒剤をやって、幻覚から愛人を殺すなんて、ありがちの事件ぢゃないか。暗くて地味だけど、狂ってて、救いようのない乾いた世界。男気みたいな概念と地元と身内を大事にして、結局、陰惨な事件を起こしてしまう。

根津甚八も秋吉久美子も鬼気迫る演技で、それだけに観るのが辛かった。俺の大嫌いな世界でもあるし。

日本の近代で土地に根付くってのはこういうことなのか…。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。